音楽喫茶『松和』の昼下がり・65
晩秋の晴れた日の昼下がり。外はちょっとヒンヤリした空気。部屋の窓からは晩秋の陽射しが降り注ぐ。部屋の中はちょっと暖か。そんな暖かな部屋の中で飲むコーヒーは格別なものがある。昼ご飯を食べた後の昼下がり。お腹も一杯、ちょっと眠気がやってきて、うつうつ微睡む。これが気持ち良い。
この気持ちの良い微睡みの中、耳を傾けるジャズがこれまた気持ち良い。刺激的なジャズはいけない。といって、微睡みを増幅させる温和なジャズもいけない。この心地良い微睡み状態を続けながら、耳に良好なジャズの心地良い刺激を与える、そんな小粋で芯のあるジャズが良い。
Gigi Gryce Quintet『The Hap'nin's』(写真左)。1960年5月3日の録音。ちなみにパーソネルは、Gigi Gryce (as), Richard Williams (tp), Richard Wyands (p), Julian Euell (b), Mickey Roker (ds)。Prestige Recordsの傍系レーベル「New Jazz」からのリリース。Prestigeだからといって、パーソネルに疑義をかけるなかれ。この盤のパーソネルは実に興味深い。
ジジ・グライスはフロリダ州出身の1925年11月の生まれ。1983年3月、57歳でこの世を去っている。活動は1950年代がメイン。1960年代初頭までにジャズ界から身を引いた。後にNYで教鞭を執るに至り、晩年には教育者としてその名を残している、変わり種ジャズメンの一人である。
まず、このリーダーのアルト奏者、ジジ・グライスが渋い。小粋で渋い、聴き応えのあるアルト・サックスを吹く。アドリブ・フレーズは端正かつ流麗。小唄を唄う様に爽快に吹き上げる。こういうアルトには旋律の美しいスタンダード曲が良く似合う。ジジ・グライスが吹くスタンダード曲はとても聴いていて心地良い。
トランペットはリチャード・ウィリアムス。知る人ぞ知る、玄人好みの燻し銀トランペッターである。音が大きくブリリアント。ブラスの響きと音の輝きが素敵なトランペット。アドリブ・フレーズは溌剌としてスインギー。聴いていて思わず体が動く。そして、ミッキー・ローカーのドラムが演奏全体に効いている。ちょっとモーダルに傾くハードバップな演奏を実に上手く鼓舞しコントロールしている。
1960年の録音からして、やや古いスタイルのワイアンズのピアノはちょっと平凡。ビ・バップ基調で軽やかにパラパラ弾き回し過ぎる嫌いはあるが、一生懸命弾いていて好感が持てる。逆にジュリアン・ユエルのベースは重心低く安定の一言。ローカーのドラムと呼応して演奏全体を鼓舞し、コントロールする。
こういうジャズ盤って、ジャズ盤紹介本にはまずそのタイトルが挙がることは無いが、昼下がりのジャズ喫茶で聴くのに最適。心地良い微睡み状態を続けながら、耳に良好なジャズの心地良い刺激を与える、そんな小粋で芯のあるジャズ。このジジ・グライスのアルバムにはそんなジャズが詰まっている。
東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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