ヒルの個性が渦巻いている
ブルーノート・レーベルの総帥、アルフレッド・ライオンがプロデューサーとして最後に発掘した才能が「アンドリュー・ヒル(Andrew Hill)」。ライオンはヒルの才能にぞっこんで、1963年から1965年の間に、なんと7枚ものリーダー作をリリースさせている。平均して5ヶ月に1枚のペース。新人にしては破格の扱いであった。
そのライオンが惚れ込んだヒルの才能は「かなり変な展開をするピアノ」。セロニアス・モンクの再来の様に、あらぬ方向へ飛んだり跳ねたりする。それでも、モンクの様に予知不可能なものではない。予想できる範囲の中で飛んだり跳ねたりする。だから、モンクのピアノより聴き易く慣れ易い。加えて「捻れる」。しかし、モンクの様にゴツゴツ「捻れない」。幾何学模様的にスイングするように「捻れる」。
予知不可能、再現不可能。これって、典型的な「即興音楽の妙」。アンドリュー・ヒルのピアノは面白い。そして、一期一会な「即興」の意味が即座に理解出来る。ジャズの典型的な例の1つがこのアンドリュー・ヒルのピアノである。ヒルの飛んだり跳ねたりするピアノの展開は、ブルーノート・レーベルに残した初期のアルバムを順に聴けば、たちどころに良く判る。
Andrew Hill『Smoke Stack』(写真左)。1963年12月13日の録音。BNの4160番。リリースは1966年。ちなみにパーソネルは、Andrew Hill (p), Richard Davis, Eddie Khan (b), Roy Haynes (ds)。デビュー盤『Black Fire』はテナーがフロントのカルテット構成だったが、この盤ではベーシストは使い分けてはいるものの、ピアノ・トリオ編成である。
ピアノ・トリオ編成なので、ピアニストの個性が良く判る。デビュー盤の『Black Fire』よりも、アンドリュー・ヒルのピアノの個性がとても良く判る盤になっている。ヒルの「予知不可能、再現不可能」なピアノの展開を向こうに回して、デイヴィスのベースとヘインズのドラムはびくともしない。自由度の高い、間を活かしたリズム&ビートの供給で、ヒルのピアノを自由に展開させている。
ヒルのピアノの個性を確認するには『Black Fire』よりも、この『Smoke Stack』の方が適している。それでも当時リリースに選ばれたのは『Black Fire』。ヒルのピアノが『Smoke Stack』よりも『Black Fire』の方が先のリリース選ばれている。恐らく『Black Fire』の方は常識的な響きをしているからだろう。逆に『Smoke Stack』では、ヒルのピアノは結構「変態」している。ヒルのピアノの個性を正確に掴むには『Smoke Stack』だろう。ヒルの個性が渦巻いている。
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