ピアノ・トリオの代表的名盤・73
ECMレーベルは「ニュージャズの代表的レーベル」である。1969年の設立。ECMレーベルは、ジャズについては「典型的な欧州ジャズ」を旨とする。そんなECMレーベルであるが、ECMレーベルお抱えの、ECMレーベルの音を代表するミュージシャンがいる。ピアノについては、パッと僕の頭の中に浮かぶのは「スティーヴ・キューン(Steve Kuhn)」。
この人のピアノを初めて聴いたのは『Ecstasy』というアルバム。もちろん、ECMレーベルからのリリース。1974年の録音なんだが、この人のピアノには驚いた。米国ジャズを中心に聴いてきた耳には「ジャズっぽくない」。どちらかというと、クラシック・ピアノに近い。リリカルそして耽美的。ファンクネスは皆無。即興演奏としてのフレーズの取り回しはクラシック風。それでいてビートはしっかりと聴いていて、演奏全体の雰囲気はやっぱり「ジャズ」。
このキューンのピアノはリリカルそのもので、一聴すればキューンのピアノと判るくらい。そんなリリカルなピアノに、ECMレーベルの録音で独特の深いエコーがかかって、独特のピアノ・ミュージックが創造される。1974年から1981年まで、間を置いて、1995年から現在に至るまで、ECMレーベルとの付き合いは続いている。ECMレーベルお抱えのピアニストの一人といって良いだろう。
Steve Kuhn『Trance』(写真)。1974年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Steve Kuhn (ac-p, el-p, vo), Steve Swallow (el-b), Jack DeJohnette (ds), Sue Evans (perc) 。パーカッション入りのピアノ・トリオである。スワローはエレクトリック・ベースを使用している。ECMらしい組合せとして、ドラムにジャック・デジョネットが参加している。
アコピもエレピも全く差が無い。どちらもリリカルで耽美的。独特の「間」が静謐感を感じさせるが、演奏全体に穏やかな躍動感がある。スワローのベースはエレベであるが、エレベの特性をよく活かしたベースラインが特徴的。ブンブンと胴鳴りするだけがジャズ・ベースで無いことを改めて感じる。デジョネットのドラミングが素晴らしい。繊細で響きの美しいデジョネットのドラミングは特筆もの。キューンのピアノにぴったりと寄り添う。
演奏のイメージとしては「ジャズ・ロック」で、フレーズの展開など、モードをベースとしながらもクラシックな要素も効果的に織り交ぜ、ECMレーベルのニュージャズ的雰囲気が色濃い。明らかに、それまでのハードバップやモードジャズとは異なる、新しいイメージのジャズ。1970年代のECMレーベルのリリースする盤には、そんな新しい響きの「ニュージャズ」が沢山あった。このキューンの『Trance』もそんな中の一枚。好盤です。
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