モーガンの思索的なトランペット
意外とリー・モーガンのリーダー作の中で、地味なのが「Vee-Jay三部作」。1960年の録音なんで、リー・モーガンのトランペットのプレイのレベルからしても悪くは絶対に無いと思うのだが、あんまり人気がある扱いをされているとは思えない。ちょっとレトロなジャケットで損をしていると単純に思っているのだが、聴いてみると、その内容に「おっ」と思うこと請け合い。
Lee Morgan『Expoobident』(写真左)。「Vee-Jay三部作」の2作目。1960年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Clifford Jordan (ts), Eddie Higgins (p), Art Davis (b), Art Blakey (ds)。痛快な好盤、前作の『Here's Lee Morgan』と比べると、ピアニストとベーシストが異なる。
ピアノが、ウィントン・ケリーからエディ・ヒギンスに、ベースが、ポール・チェンバースからアート・デイヴィスに変わっている。その影響なのだろう、演奏全体の雰囲気が、明るいメリハリの効いたハードバップから、ちょっとモードに傾いた、新主流派な思索的でクールな雰囲気に変わっている。
その変化のせいだと思うのだが、この盤でのリー・モーガンのトランペットは、前作の『Here's Lee Morgan』と比べると、抑制が効いて、ちょっと大人しいプレイになっている。この辺が、前作よりも人気が無い理由なのかなあ、と思うのだが、これはこれで聴き応えがある。ジャズのトレンドの最先端を意識した「モーガンの考えるジャズ」の姿を捉えていて、実に興味深い。
モーガンは、鯔背なハードバップなトランペットを吹きまくる、というのが固定観念で、「抑制」や「思索的」とは無縁のプレイヤーと思われがちなんだが、それは当たらない。意外とその時その時のジャズの演奏の「流行」というのを意識している。まあ、それが当時のジャズ者リスナーに受けたのかどうかは別として、考えるトランペッターであったことは、この辺りのアルバムを聴くと良く判る。
あまり上等とは思えぬディレクター・チェアに股を開いて尊大に腰掛けるモーガン。トランペッターとしての自信の現れ、と僕は捉えているが、この『Expoobident』と前作『Here's Lee Morgan』とは兄弟盤みたいな存在で、どちらの盤でも主役のリー・モーガンは自由奔放にトランペットを鳴らしている。それこそが、この盤の一番の魅力だろう。好盤です。
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