インパルス・レーベルの隠れ好盤
暑い夏は意外とスタンダードな純ジャズが良い。もともとジャズって、ビートの効いたポジティブな演奏が基本なので、涼しいジャズなんてものは無いのだ。激しさや破綻ちは全く無縁の、ジェントルで端正な純ジャズが良い。耳当たりが良くて、安心してアドリブに耳を委ねることが出来て、ちょっとした破綻に苛つくことも無い。
インパルス・レーベルのアルバムについても聴き直しを進めている。インパルス・レーベルは、プロデューサー、クリード・テイラーによって1960年に設立されたジャズ・レーベル。 フリー・ジャズのレーベルとして有名だが、カタログを見渡して見ると、従来のハードバップのアルバムも散見され、内容的にも先進的なものが多い。ジャケット・デザインについては、見開きのジャケットで、黒とオレンジ色で統一されたデザインが特徴。
Paul Gonsalves『Cleopatra Feelin' Jazzy』(写真左)。1963年5月21日の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Gonsalves (ts), Hank Jones (p), Dick Hyman (org), Kenny Burrell (g), George Duvivier (b), Roy Haynes (ds)。エリザベス・テイラー主演の映画『クレオパトラ』を題材にして、映画制作年に録音。
1曲目「Caesar and Cleopatra Theme」、2曲目「Antony and Cleopatra Theme」が映画の曲になる。ポールはエリントン・バンドの名テナー奏者である。5曲目「Action in Alexandria」については、デューク・エリントンが曲を提供したりしている。この盤、選曲が良い。聴き心地の良い、聴き応えのある楽曲を上手く取り込み、鑑賞するに楽し。いきなり集まってのジャム・セッションとは異なり、鑑賞を前提とした小粋なアレンジが随所に施されている。
ポール・ゴンザルベスは端正で、力感も豊かな正統派テナー。流麗かつ破綻無く全く安心して聴けるテナー。そこに、ディック・ハイマンの安定かつ明朗なオルガンが実に効果的。音の彩りとして、バレルのギターが素敵に響く。リズム&ビートは、デュビビエのベースとヘインズのドラミングがガッチリと支えてくれる。パーソネルを見て「悪かろう筈が無い」。極上の成熟した「鑑賞用のハードバップ」がこの盤に詰まっている。
この盤、ジャズ盤紹介にはほとんど名前が挙がらない盤なんだが、どうして、聴いて見ると極上のハードバップである。ジャズ盤紹介本ばかり頼っていては、恐らく出会うことは無い。こういう「知る人ぞ知る」アルバムって、ジャズ・レーベルをカタログ順に聴き進めて行くと、確実に出会うことが出来る。これもジャズ鑑賞の醍醐味。
« ジャズ喫茶で流したい・125 | トップページ | 「ネオ・スピリチュアル」の先駆 »
コメント