ピアノ・トリオの代表的名盤・71 『Circle Waltz』
暑い。猛暑日が続く。夜は熱帯夜が続く。今年の夏はとびきり暑い。この蒸し暑さというのは音楽鑑賞には大敵で、エアコンの入っていない部屋でのアルバム鑑賞は不可能である。まず、集中して聴けない。加えて、暑い時に聴くジャズはシンプルなものが良い。そういう意味で、夏は「ピアノ・トリオ」盤を選盤する機会が増える。
Don Friedman『Circle Waltz』(写真左)。1962年5月14日の録音。ちなみにパーソネルは、Don Friedman (p), Chuck Israels (b), Pete LaRoca (ds)。ドン・フリードマンの2枚目のリーダー作。タッチとフレーズの雰囲気が、ジャズ・ピアノのレジェンド「ビル・エヴァンス」に似ている、という評価で、エヴァンスの完璧なフォロワーと言われる。
しかし、聴いて見て思うんだが、リリカルなタッチは、流麗なフレーズは、確かにエヴァンスに似てはいるが、アドリブ・フレーズのイメージはエヴァンスとは異なる。エヴァンスの基本はバップ・ピアノ。バップ・ピアノのイメージからモーダルなフレーズに展開し、間を活かしたクールなアドリブが絶対的個性。
フリードマンのピアノは、タッチこそエヴァンスのリリカルなタッチに似てはいるが、基本部分で、バップ・ピアノのイメージはあまり無い。流麗なフレーズではあるが、バップ・ピアノのそれでは無い感じ。どちらかと言えば、クラシックな雰囲気の漂うフレーズの展開であり、アドリブの組み立ては「幾何学的」であり、そういう意味で、ジャケット・デザインの雰囲気が、フリードマンのピアノにピッタリ合っている。
ベースがチャック・イスラエルなので、ビル・エヴァンスとの関連性を取り立たされるが、ドラムがピート・ラロカである方が、重要なポイントだと思っている。ラロカのドラミングは、ビ・バップでも無ければ、ハードバップどっぷりでも無い。「モーダル」なドラミングとでも形容したら良いだろうか。このラロカのドラミングが、このアルバムのトリオ演奏の雰囲気を決定付けている。
ハードバップから、モードをメインとした新主流派への掛け渡し的なピアノ・トリオの音。フリードマンのピアノとイスラエルのベースが、ハードバップと新主流派、良い意味で「どっち付かず」のイメージで、そこにラロカの明らかに新主流派なドラミングが入ることによって、モーダルな新しい響きを獲得しているところが面白い。意外と他に無い、個性的な響きを宿したピアノ・トリオ盤である。
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