ホレスの質実剛健なハードバップ
ホレス・シルヴァーのピアノが好きである。ファンキーなピアノ、と言えば、このホレスのピアノのことである。しかも、ホレスは作曲の才がある。彼は「売れる曲」を書く。「Sister Sadie」「The Preacher」「Song for My Father」など、大衆的な、ブルーノートの総帥アルフレッド・ライオンの表現を借りると「コーニー(corny)」な曲を書く。これがまた、ホレスの魅力である。
しかし、そんなホレスが、質実剛健なハードバップ一本槍でプレイしまくるアルバムが存在する。このアルバムを初めて聴いた時は、ピアニストが誰か判らなかった。ホレスらしくはある。しかし、演奏全体の雰囲気は、質実剛健な、当時、最先端を行くハードバップな演奏。大衆的な曲、ファンクネスだだ漏れの「コーニー(corny)」な曲は一曲も無い。つまり、ホレスのリーダー作という認識を全くモテなかった。
Horace Silver『Silver's Serenade』(写真左)。1963年5月の録音。ブルノートの4131番。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (p), Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Gene Taylor (b), Roy Brooks (ds)。数々の名演を生み出してきた、ホレス・シルヴァー鉄壁のクインテットである。
全体が非常に締まった、硬派なハードバップである。録音年は1963年。ジャズのトレンドは、ファンキー・ジャズ、そして、モード・ジャズがメイン。1950年代後半のハードバップは過去の演奏トレンドの様な扱い。しかし、この『Silver's Serenade』には、質実剛健な、当時の最先端を行くハードバップな演奏がぎっしりと詰まっている。非常に迫力があり、スリリングな演奏がてんこ盛り。そういう意味では、この盤は、ホレスのリーダー作の中では、異色と言えば異色な存在。
フロントのミッチェルのトランペットが何時になく饒舌であり流麗。そして、クックのテナーのテクニックが素晴らしい。何処か、ハードバップ時代のコルトレーンを彷彿とさせるアドリブ・フレーズを連発する。この盤でのフロントの2人は一言で言って「巧い」。ミッチェルとクックってイマイチだよね〜、とする評論家の方々もいるが、とんでも無い。ここでのミッチェルとクックは充実のブロウ、充実の展開を叩き出す。
テイラーのベース、ブルックスのドラムの安定度は抜群。そんなリズム&ビートを得て、ホレスは熱い、質実剛健なハードバップなフレーズを弾きまくる。疾走感溢れ、テクニック極上。こんなに高度のハードバップしたホレスのピアノはなかなか他の盤では聴けない。我が国では、ホレスのリーダー作としては地味な存在だが、中身は超一級品。ハードバップ者にお勧めの好盤です。
東日本大震災から7年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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