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2018年6月18日 (月曜日)

ザイトリン80歳のトリオ好盤

ジャズの新盤を眺めていて、1960年代から活躍する大ベテランのジャズメンの名前を見つけるのが楽しみである。この5年ほど前から、どんどん鬼籍に入っていく「馴染みのベテラン・ジャズメン達」。長年、リアルタイムで彼らのパフォーマンスを感じてきただけに、寂しいことこの上無い。逆に、大ベテランのジャズメンの名前を見つけると、とっても嬉しくなる。

Denny Zeitlin『Wishing On the Moon』(写真左)。今年の5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Denny Zeitlin (p), Buster Williams (b), Matt Wilson (ds)。2018年4月に80歳を迎えたベテラン・ピアニスト、デニー・ザイトリン(Denny Zeitlin)のリリシズム溢れる「入魂のピアノ・トリオ」。これが80歳の音か、とビックリのトリオ好盤。

デニー・ザイトリン。「医師とジャズピアニスト」という二足の草鞋を履く異色の人物。医師は医師でも精神科医。本業である精神科医の仕事をこなす傍ら、プロのピアニストとしての活動も続けてきたザイトリン。しかも双方の仕事において、それぞれ一流の域に達していたと言うのだから凄い。デビューした時から、そのピアノの響きとフレーズは新しい響きに満ちて、「新主流派」のトレンドを先取りした様な先進的なピアニストであった。 
 
 
Wishing_on_the_moon
 
 
ピアノの響きはエバンス派と解釈されるが、和音とフレーズの響きは、エバンス派のそれとは全く異なる。和音の作りはセロニアス・モンクを端正にした様な、やや不協和音がかった個性的な和音。フレーズは、高速モーダル・ピアノ。エバンス派と解釈されつつ、ザイトリンの感覚は全く異質なピアノ。1960年代の新主流派のピアノであるが、ザイトリンのタッチは冷静であり、典雅であり、理知的である。

この盤でも、そんなザイトリンのピアノの個性はしっかりと確認出来る。というか、以前よりも洗練された、典雅な響きがより強調されている気がする。ベースにバスター・ウィリアムスの名が確認出来るのが嬉しい。このトリオは2001年以来、ずっと同じメンバーで活動を続けている。この盤を聴いて思うのは、このトリオは熟練の賜である、ということ。ザイトリンにとっても特別なトリオなんだろう。

このトリオ盤を聴いて、ザイトリンのピアノだと見破るジャズ者の方はまずいないでしょう。タッチが明確で瑞々しい分、それでいて、熟練の香りのするトリオ・パフォーマンスから、40〜50歳代の中堅ピアニストの演奏と感じて、それでいて、思いっきり新主流派のど真ん中を行くピアノに「誰だこれ」となること請け合い(笑)。ザイトリンのこれが80歳の音か、とビックリのトリオ好盤です。

 
 

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Never_giveup_4

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