ジャズ喫茶で流したい・122
最近の新盤の傾向として、内容の素晴らしさに反比例して、これは一体なんなんだ、と呆れるくらいのチープなデザインのジャケットが多い様に感じる。確かにCDのサイズになって以来、LP時代の様にジャケット・デザインに腕を振るうことは少なくなった。が、それにしても、最近「とほほ」な内容のジャケット・デザインが多すぎる。これは実に残念なことである。
Reis Demuth Wiltgen『Once in a Blue Moon』(写真左)。今年6月のリリース。録音はECMの第3スタジオ、アルテスオーノ。ちなみにパーソネルは、Michel Reis (p), Marc Demuth (b), Paul Wiltgen (ds)。イタリアの名門CAM JAZZレーベルからのリリース。ルクセンブルク出身のピアノ=レイス、ベース=デムス、ドラム=ウィルトゲンのピアノ・トリオである。
この「とほほ」なジャケットからは想像出来ない、知的で透明感のある欧州ジャズなサウンドである。曲毎に、しっかりと起承転結のある、メロディアスでドラマチックな楽曲も良い内容。全13曲中9曲がレイスのオリジナル。リリカルでフォーキーな良い曲を書く。レイスのピアノはクラシックな雰囲気が底に漂いつつ、紡ぎ出されるフレーズは親しみ易くポップなイメージ。過去にありそうでない、欧州ジャズ的な唄うが如くのピアノである。
デムスのベースも良い音を出している。骨太でしなやかで張りのあるベース。レイスの知的で透明感のあるピアノによく絡む。絡むが決してピアノの邪魔はしない。しっかりと支え、寄り添うようなベース。決して、耳触りで無い、唄う様なベース。ジョニ・ミッチェルの名曲'「Both Sides Now」のカバーでは、このデムスのベースがフィーチャーされ、ただひたすらに、骨太でしなやかで張りのあるベースが唄う。
ウィルトゲンのドラムも特筆もの。ポリリズミックで、硬軟自在、変幻自在なドラミング。それでいて、リズム・キープ力は抜群。揺らぐことは皆無。チェンジ・オブ・ペースも的確、かつ柔軟で、レイスのピアノをしっかりと支えている。リズム&ビートをデムスのベースと的確な役割分担をしつつ、これまた唄う様なドラミングを披露する。
この「ピアノ=レイス、ベース=デムス、ドラム=ウィルトゲン」のピアノ・トリオは「唄うピアノ・トリオ」。3者が一体となったインタープレイはキャッチャーでインテリジェンス溢れる、唄うが如く、欧州的な響きを湛えたピアノ・トリオの音である。ドラマチックでダイナミックな展開も多々あって、全編を通じて飽きることは全く無い。好盤である。
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