リピダルの先進的なエレ・ジャズ
暑くも無く寒くも無い。この5月の過ごしやすい季節は、ハードなジャズを聴くのに最適な季節である。まあ、今年の5月の意外と天気が悪く、天気が回復すると途端に夏日と暑くなる。過ごしやすい、というにはちょっと、という感じなのだが、それでも夏や冬の気候に比べたら、圧倒的に過ごしやすい。
この過ごしやすい季節によく聴くジャズのひとつが「ECMレーベル」のアルバム達。夏には暑さを我慢して聴くにはハードなフリー・ジャズや、真冬に聴くと更に寒さを感じる様な、静謐なニュー・ジャズなど、傾聴するに結構ハードな盤が多いレーベルである「ECMレーベル」。このレーベルのアルバムを聴くのは、過ごしやすい季節、初夏そして秋が一番なのだ。
Terje Rypdal『What Comes After』(写真左)。1973年8月の録音。ECMの1031番。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (g, fl), Erik Niord Larsen (oboe, English horn), Barre Phillips (b), Sveinung Hovensjø (el-b), Jon Christensen (perc, organ)。ノルウェー出身のギタリスト兼作曲家、テリエ・リピダルのリーダー作である。リピダルのギターは、ジャズを中心にロックから現代音楽まで、その表現については幅が広い。
特に、幽玄なフレーズを用いた「’ニュー・ジャズ」の音が得意で、ファンクネスは皆無であり、ブルージーな要素は微弱。そういう意味では、リピダルのギターは欧州独特のものだと言える。ギターのパッションな音色の特性を活かしたフリーな表現も得意としており、それまでの4ビート中心のジャズとは明らかに一線を画している。この盤では、そんなリピダルのギターを前面に押し出した「エレ・ジャズ」が展開される。
一聴すると「エレ・マイルス」かな、と感じるんだが、決定的な違いは「ファンクネスの有無」。あまりビートを強調しない、ファンクネス皆無な即興演奏をメインとした音世界は、独特なエコーも伴って、実にECMレーベルらしい。ジャズ、プログレ、クラシック、現代音楽と様々な音楽の要素を織り交ぜて、自由度の高いエレ・ジャズが展開される。今のジャズのトレンドで言うと、クールな「スピリチュアル・ジャズ」な雰囲気も濃厚。
ベースの音も生々しくて魅力的。この盤で聴かれるベースは、自由度が高く、ややサイケデリックな要素も見え隠れする、本場米国には無い、欧州独特、ECM独特のベースの音。リピダルの「エレ・ジャズ」の世界は他の「エレ・ジャズ」とは全く異なり、個性的である。そういう意味では、もう少し評価が高くても良いのではと思う。プログレッシブなエレ・ジャズの好盤。
東日本大震災から7年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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