途方も無いトランペッターがいた
リー・モーガンのトランペットは我が国では、地味な存在に甘んじているように思う。どうも、トランペットと言えば「マイルス・デイヴィス」で決まり、という風潮があり、譲って、クリフォード・ブラウン。どうも、トランペットって、日本人ジャズ者の方々って、サックスと比べて、あまり好きなんじゃないかしら、とも思える、裾野の狭さである。
Lee Morgan『Lee Morgan Indeed!』(写真左)。1956年11月4日の録音。BNの1538番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Horace Silver (p), Clarence Sharpe (as), Wilbur Ware (b), Philly Joe Jones (ds)。鯔背で小粋でファンキーなモーガンのトランペットを支えるべく集められた、ベテラン・ジャズメンの面々。天才モーガン、弱冠18歳の初リーダー作。
テクニック的にもほぼ完成されていて、後は熟成からくる余裕だけか。素晴らしいトランペット。どう聴いても、18歳の「ガキ」のプレイではない。テクニック的には全く申し分無い。また、それを前面にひけらかす「若さ」も無い。とにかく吹きまくる。ビ・バップなトランペットを基本としつつ、当時、最先端のハードバップ風のロングソロをいとも問題なさげに吹ききっていく。
とにかく、当時のトラペッターのリーダー作としては、マイルス・デイヴィスを除いてであるが、出色の出来である。天性のテクニックの素晴らしさ、これに尽きる。この素晴らしいテクニックを駆使して、それをひけらかすことなく、テクニックを良い方向に駆使して、硬軟自在、緩急自在、自由自在、縦横無尽に、様々な表現を聴かせてくれる。なんと老成したプレイであることか。
クリフォード・ブラウンのトランペットは、堅実であり優等生であり模範であった。そういう面では、モーガンのトランペットは、鯔背であり、小粋であり、ちょっと不良っぽかった。ソロのブロウの最後の音を「キュウッ」と捻りを入れるところなんぞ、鯔背の最たるところ。どっぷりファンキーなフレーズをバリバリ鯔背に吹くところなんざあ、ちょっと不良っぽくて格好良い。
1956年の録音。演奏の雰囲気としては、まだ「ビ・バップ」の延長線上にあるアドリブ・ソロではあるが、やはり、モーガンのトランペットが突出している。音が多すぎるという指摘もあるが、若さ故、それは仕方の無いことだろう。しかし、モーガンは品が良い。この途方も無いテクニックをひけらかしにかかってはこない。僕はモーガンの「ここ」に惚れる。
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