ハサウェイの傑作ライブ盤
1970年代、ジャズは多様化が進む。純粋なジャズだけの音もあるにはあるが、ロックの要素を取り入れたクロスオーバー・ジャズが幅を利かせ、その後、大ブームとなったフュージョン・ジャズが席巻する。ジャズの音の要素は他のジャンルにも広がっていく。ソウル・ミュージック、その後のR&Bにジャズのテイストは浸透していった。
ジャズを聴いていて、耳が少々、ジャズに疲れた時は「ジャズの合間の耳休め」の盤を選盤して耳を傾ける。しかし、それがあまりにジャズからかけ離れていては駄目だ。ジャズ周辺のフュージョン周辺の音が良い。その演奏のテイスト、その演奏の雰囲気。ジャズに通じるノリと演奏テクニック。芳しきファンクネス、そして、ソウル。
Donny Hathaway『Live』(写真左)。1972年の作品。全米18位。早逝したR&Bの天才歌手、ダニー・ハサウェイの傑作ライブ盤である。ちなみにパーソネルは、Phil Upchurch, Cornell Dupree, Mike Howard (g), Willie Weeks (b), Fred White (ds), Earl DeRouen (conga, ds)。フィル・アップチャーチ、コーネル・デュプリーなど、後のフュージョンの名うてミュージシャンが参加している。
アルバムの前半(1〜4曲目)には、1971年8月にハリウッドのトルバドールで行われた公演からの抜粋が収録され、後半(5〜8曲目)には10月にニューヨークのビター・エンドで行われた公演から抜粋されている。これが、とっても良い雰囲気のライブ・パフォーマンスなのだ。バックのシンプルな演奏もさることながら、聴衆のレスポンス、パフォーマンスが見事。
ファンクネス溢れ、米国ルーツ・ミュージック、とりわけ、ブルース、ソウル・ミュージック、ゴスペルの要素を取り入れつつ、ジャズをベースとした演奏をバックに、ハサウェイはソウルフルにそれぞれの曲を唄い上げていく。従来のジャズ・ボーカルよりも、ポップでソウルフルでスピリチュアルな歌唱。
特にカバー曲が秀逸。冒頭の「What's Going On」、4曲目の「You've Got a Friend」、7曲目の「Jealous Guy」など、思わず惚れ惚れして聴き込むほどの出来の良さ。一分の遅れも隙もなくプレーヤーと一体化した観客、一緒になって大声で歌う瞬間。このライブ盤は、その場で自分も聴いていると錯覚させてくれるほどの「ライブ感」に満ちあふれている。
東日本大震災から7年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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