究極のヨーロピアン・カルテット 『Sleeper』
1970年代のキース・ジャレット。アメリカン・カルテットとヨーロピアン・カルテットの平行活動。この2つの対照的なカルテットの音が実に面白い。キースはどちらのカルテットでも、そのパフォーマンスは変わらない。結果として、テナー・マンの音の個性がバンド全体の音の個性を決定付けている。アメリカン・カルテットのテナーは「デューイ・レッドマン」。ヨーロピアン・カルテットのテナーは「ヤン・ガルバレク」。
素直でエモーショナルな、音的には明らかに欧州的でクール、ファンクネス皆無の流麗かつ透明度の高いガルバレクのテナーが、キースの「ヨーロピアン・カルテット」の音作りの鍵を握っている。ガルバレクのテナーの音がスッと入ってくるだけで、そのカルテットの演奏は「ヨーロピアン・カルテット」の音の雰囲気に包まれる。
これがキースにとって良かったのか、悪かったのか。ナルシストで自己顕示欲の強いキースである。自分より目立つ、バンドの音を決定付けるテナー・マンの存在。最初の頃は、キース自身はソロ・ピアノも平行してやっていたので、ソロ・パフォーマンスについては、テナーに一歩譲る余裕があったかもしれない。でも、テナー・マンの人気が上がってくると、ちょっとなあ、って気分になったんやないかなあ。
Keith Jarrett『Sleeper』(写真左)。1979年4月16日、東京は中野サンプラザでのライブ録音。改めてパーソネルは、Keith Jarrett (p), Jan Garbarek (ts, ss), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。所謂「ヨーロピアン・カルテット」な4人である。2012年7月、約33年の時を経て、突如、リリースされたライブ音源である。この音源、何故、お蔵入りしていたのか。暫くの間、不思議で仕方が無かった。
最近思うに、ガルバレクのテナーがあまりに素晴らしく、主従が逆転した様な演奏が多いことが原因ではないか、と睨んでいる。思わず「ヤン・ガルバレク・カルテット」かと思う位の内容。当時、キースはまだ34歳の若さ。この主従が逆転した様なカルテット演奏は、世に出したくなかったのかもしれない。それほどまでに、このライブ音源でのガルバレクのテナーは素晴らしい。ベースのダニエルソンも、ドラムのクリステンセンも、ガルバレクを鼓舞する様にビートを刻む。
ゴスペル風のアーシーな展開、モーダルで自由度の高い、時々フリーキーな演奏。素晴らしい内容である。演奏の整い方、楽曲の構成、想像性豊かなアドリブ・ソロ、どれをとっても、ヨーロピアン・カルテットの録音成果の中で、この『Sleeper』が頭1つ抜きん出ている。ヨーロピアン・カルテットの代表盤。ガルバレクが目立つ、これがまた、キースのヨーロピアン・カルテットの良き個性のひとつでもある。好ライブ盤である。愛でられたい。
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