キースらしからぬ例外の一枚 『Tokyo '96』
キース・ジャレットの「スタンダーズ」の新盤がリリースされた。慢性疲労症候群という難病に冒され、1996年のソロ・ツアー以降、休養状態に、このまま、引退かとも思われた。しかし、1998年に復帰。その復帰後初となった1998年の「スタンダーズ」でのライヴ・レコーディングが、今回、リリースされた。
が、この盤のお話しは後日に譲るとして、休養前、唯一枚、聴き直しを漏らしていた、スタンダーズのライブ盤について、ここで語っておこうと思う。Keith Jarrett『Tokyo '96』(写真左)。1996年3月30日、東京渋谷のBunkamura・オーチャードホールでのライブ録音。改めて、パーソネルは、Keith Jarrett (p), Gary Peacock (b), Jack DeJohnette (ds)。いわゆる「スタンダーズ」の3人である。
休養に入った年が1996年なので、この東京でのライブは、休養直前、キースとしては体調はほぼ最悪であったと思われる。確かにそうやな、と思われる「ふし」が幾つかある。まず、演奏全体、特にキースのソロが落ち着いている。落ち着いているが故に判り易い。あまりに判り易い。そして、あのキースの「唸り声」がかなり小さめで発生も少ない。
むむ、で、この盤の評判を見てみると、評判は上々。キースの演奏は「落ち着いていて、判り易い」。キースのピアノを理解するには最適である、という、このライブ盤は「スタンダーズ」のベスト盤という感想まである。そう言えば、例のキースのソロ盤『ケルン・コンサート』も似たような状況だったような。確かあの時もキースは体調が最悪だったはず。キースってちょっと可哀相。体調の悪い時の演奏ほど、評判が上々だったりするのだ。
で、僕の感想は、やはり、このライブ盤のキースは「いつものキースでは無い」。いつもは、もっとアグレッシブでメリハリが効いていて、ところどころフレーズが捻れていて複雑なところがあって、唸り声が絶好調なはず。僕にとってそんなキースが絶好調なキースであって、この盤でのキースはどこか「いつものキースと違うという違和感」が色濃く漂っていて、楽しんで聴くことは出来るんだが、聴き終えてから、なんだかちょっと違うなあ、という思いに駆られるのだ。
そして、このライブ盤、いつになく、ジャック・デジョネットのドラムが大きくフューチャーされている。ポリリズミックなデジョネットのドラムは素晴らしいのだが、スタンダーズはキースのピアノが一番目立たなければならない筈なんだが、これも違和感。この違和感が色濃く漂うライブ盤、振り返れば、この後、難病に取り憑かれ休養を余儀なくされる、そんな厳しい状況下で録音された、キースらしからぬ「例外の一枚」である。
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