こってこてのソウル・ジャズ
ソウル・ジャズ。1960年代、ブルースや教会音楽を基本にした曲を元にしたジャズの流行の演奏スタイル。ブルースのフィーリングが強く、ゴスペルの要素を折り込んで、黒人音楽的要素を前面に押しだしたところが特徴。ポップで大衆的な雰囲気で、高揚感が漂い、今の耳で聴くと、スピリチュアルな側面が見え隠れする、ファンキーなジャズという雰囲気。
僕がジャズを聴き始めた1970年代後半では、ソウル・ジャズは異端であり、俗っぽく、本気で聴くジャズでは無い、とされた。僕の印象としては、演奏自体はソウル・ミュージックからR&B基調の音なので、違和感は無い、というか大好きなのだが、ボーカルが入るところがどうにも気恥ずかしくて、ステレオやカセットテレコから音を出しながら聴くということが出来なかった。
全く、許容量の少ないことであった(笑)。でも、である。50歳を過ぎることから、このソウル・ジャズについては、全く拘ること無く聴くことが出来ようになった。恐らく、年齢がそうさせたのだろう。もともと子供のころから、ソウル・ミュージック、特にモータウン系が好きだったので、ソウル・ジャズのボーカルについても実は全く抵抗が無かった。
Les McCann『Talk to the People』(写真左)。ソウル・ジャズの中核的存在、キーボード奏者レス・マッキャンの好盤。1972年3月30日の録音。もう米国の最大のポップ・ミュージック・ジャンルは「ロック」の時代である。そこにこの「こってこてのソウル・ジャズ」。この盤、聴けば判るが、徹頭徹尾、こってこてのソウル・ミュージックである。バックの演奏は確かにファンキー・ジャズではあるが、ボーカルが入ると、これはもう「ソウル」でしょう。
演奏を聴いていると、思わず足でリズムを取り始め、体が動き始め、遂には踊り出してしまう。そして、このソウル・ジャズ盤、聴きどころは、レス・マッキャンのフェンダー・ローズ。ローズ独特の丸く揺れる鋭角な音が実にソウルフル。ゴスペル的な和音を重ねつつ、徐々にクレッシェンドしている様は、まさに「高揚感溢れるスピリチュアル」なもの。リズム&ビートはダンサフル。
若い頃は自らの耳で確かめること無く、つまりはジャズ雑誌の硬派な評論に左右されていたんだなあ、と今になって苦笑している。ということで、この盤である。これが実に良い雰囲気の、ポップでブルージー、ゴスペルチックでスピリチュアル。聴いて楽しいソウル・ジャズ。週末の晴れた朝、ゆったりと気持ちを高めたい朝。このソウル・ジャズは最適のBGMである。
東日本大震災から6年11ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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