ECMの音の迷宮の奥は深い Mal Waldron『The Call』
ジャズ盤を聴くのに、ガイド役として、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌を活用することは大変大切なことではある。しかし、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で紹介される盤は、それぞれ結構似通っている。記事を担当した評論家の手抜きなのか、はたまた、編集に携わった編集者の陰謀なのか、確かにジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で紹介されるジャズ盤は「聴く価値あり」だが、「聴く価値あり」のジャズ盤はそれだけではない。
ジャズ盤を聴き進めて行くと、このジャズ盤紹介本やジャズ雑誌を活用する方法がどこかで行き詰まる。すると、自分で聴く価値のある盤を探すことが必要なのに気付く。やはり、ジャズ盤は自分の耳で聴いて、自分の耳で、自分にとっての「良し悪し」を判断することが一番大切なことに気付く。
Mal Waldron『The Call』(写真左)。1971年2月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Mal Waldron (el-p), Jimmy Jackson (org), Eberhard Weber (el-b), Fred Braceful (ds, perc)。ECM傘下のレーベル JAPOからのリリース。さすがECM系の録音。これは珍しい。骨太硬派のピアニスト、マル・ウォルドロンが全編エレピを弾いた作品である。
僕はこの盤の存在については、ECMレーベルのカタログを紐解いていて発見した。この盤について、その評論や感想が書かれたジャズ盤紹介本やジャズ雑誌を見たことが無い。しかも、あの硬派で骨太な硬質ピアニスト、マル・ウォルドロンである。そんなマルが、こともあろうにエレピを全編に渡って弾きまくるのだ。許せない、と硬派のジャズ者の方々が憤慨して、この盤を亡きものにした感覚も判らなくは無い。
内容的には録音当時、ジャズ界の先端のトレンドのひとつだった「エレジャズ」。いわゆるジャズロックの雰囲気が大勢を占め、後半の途中あたりから、アブストラクト〜フリーな演奏が展開される。後半のアブストラクト〜フリーな演奏は納得できるが、欧州ジャズの環境下でのジャズロックはちょっとした驚き。しかし、それなりにまとまっていて今の耳にも十分に耐えます。特にマルのエレピについては合格点。エレピの特徴をよく掴んでいて、聴き応えがあります。
現代のスピリチュアル・ジャズファンクに直結するマルのエレピ。バックのオルガン=エレベ=ドラムのリズム・セクションも良好で、こんなアルバムあったんや〜感が強い。アルバム・ジャケットも当時のデザイン・センスからすると突出していて、こういうアルバムをリリースするって、ECM恐るべし、である。実はECMレーベルには、こういう異端なジャズ盤がゴロゴロしている。ECMの「音の迷宮」の奥は深い。
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