キースのアメリカン4の決定盤 『The Survivors' Suite』
ずっと、キースのアメリカン・カルテットの諸作を聴き直して来て、つまるところ「キースのアメリカン・カルテット」って何やったんや、という思いが強い。Impulse!レーベルの諸作を順番に聴き直してみて、これは、と思う素晴らしい部分もあるんだが、あれれ、とちょっとズッこける部分もあって雑然としている。全体を通して、まんべんなく充実しているアルバムが無いのだ。
それが「アメリカン・カルテット」の面白さと言えば面白さ。きちっとまとまっていない、ちょっと雑然として、ちょっと散漫とした部分が味と言えば味なのだ。音楽性としても、フォーキーでアーシーなフォービートの曲想もあれば、フリーキーでアブストラクトな曲想もあれば、思いっきりモーダルな自由度の高い曲想もあれば、瞑想的な幽玄でスピリチュアルな曲想もある。とにかく、キースのやりたいことがごった煮。
雑然、ごった煮のアメリカン・カルテットが、なんと欧州の純ジャズ・レーベルの雄、ECMレーベルに2枚のアルバムを残している。1枚はスタジオ録音、もう1枚はライブ録音。アメリカン・カルテットって、その名の通り、米国っぽいカルテットで、大雑把で雑然としていてごった煮。これが、欧州のレーベル、それも現代ジャズの宝庫、ECMレーベルにアルバムを残しているのだ。
Keith Jarrett『The Survivors' Suite』(写真左)。邦題『残氓』。1976年4月の録音。アメリカン・カルテットなのにドイツでの録音である。ここからしてユニーク(笑)。ちなみに改めて、パーソネルは、Keith Jarrett (p, ss, celeste, ds), Dewey Redman (ts, per), Charlie Haden (b), Paul Motian (ds, per)。キースはピアノだけでなく、ソプラノ・サックスを吹いたり、ドラムを叩いたり。やりたい放題である(笑)。
ちなみに、このECMの『残氓』、アメリカン・カルテットの諸作のなかで、一番カッチリとまんべんなく充実してまとまっているアルバムなのだ。キースの大好きな「フォーキーでアーシーなフォービートの曲想」だけを省いて、フリーキーでアブストラクトな曲想と、思いっきりモーダルな自由度の高い曲想と、瞑想的な幽玄でスピリチュアルな曲想がバランス良く、織り込まれていて、素晴らしいパフォーマンスとして記録されている。
ECMの総帥、マンフレッド・アイヒャーのプロデュースの成せる技なのか、あの雑然、ごった煮のアメリカン・カルテットの音世界が、実にアーティスティックにきっちりとまとまっている。メンバーのパフォーマンスもバランスが良く、キースだけが目立つことも無い。この『残氓』こそが、キースのアメリカン・カルテットのスタジオ録音の決定盤だと僕は思う。アメリカン・カルテットについて、やっと溜飲が下がった思いだ。
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