ECMに冬の季節が良く似合う
僕がジャズを聴き始めた頃、1970年代後半になるが、純ジャズの世界では従来の老舗レーベルに加えて、欧州系の新興レーベルのアルバムが話題を集めつつあった。欧州系のレーベルとは、ECM、SteepleChase(スティープルチェイス)、Enja(エンヤ)などが代表的なところ。特に、ECMレーベルは日本でも人気のレーベルになっていた。
当時、ECMのLPは高価で、廉価盤などは皆無。雑誌などで採り上げられていないアルバムなどは情報不足で、聴いてみるまでその評価は不明という、新たに購入するには相当にリスキーなレーベルでもあった。しかも、通常のジャズ喫茶ではビ・バップでもハードバップでも無い、ニュー・ジャズと呼ばれるジャンルがメインのECMのアルバムは敬遠気味で、聴くことの出来る機会は少なかった。
そういう面では僕は恵まれていて、大学近くの例の「秘密の喫茶店」では、何故か、ニュー・ジャズと呼ばれる欧州系のレーベルのアルバムが結構キープされていた。ECMレーベルのアルバムは相当数、保有されていた記憶がある。これは有り難かった。特に、冬にはECMのアルバムが良く似合う。冬の季節、珈琲を飲みに行く度に、ECMのアルバムをよくリクエストさせて貰った。
ECMに冬の季節が良く似合う。そんなアルバムの一枚が、Jan Garbarek『Dis』(写真左)。1977年のリリース。アルバム・ジャケットを見るからに「冬の季節に合いそうな」面構えをしている。特に、ヤン・ガルバレクのテナーは、硬質で切れ味の良いもので、ECM独特の深いエコーに乗って、怜悧でエモーショナルなテナー。確かに冬の雰囲気によく合ったテナーの音である。
特に、このアルバムは、ガルバレクのテナーと12弦ギターのラルフ・タウナーのデュオが基本なので、ガルバレクの硬質で怜悧なテナーの個性が増幅されている。ファンクネスは皆無。欧州系独特のクリスタルで硬質な音は、ECM独特の音世界を実に良く表現している。ガルバレクのテナーは歌心もあって、聴いていてとても印象的なもの。印象に残る充実の内容。
北欧のコルトレーンと呼ばれるガルバレクではあるが、この盤ではフリーキーに傾くことも無く、アブストラクトに構えることも無い。メロディアスで印象的なフレーズを、硬質で怜悧な伸びのあるテナーで吹き上げていく。印象的なジャケットと相まって、確かに「冬の季節」にピッタリな雰囲気の音世界である。例の「秘密の喫茶店」では昼下がりによく聴いた思い出がある。
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