チックとクジャラのデュオ演奏
チックとボラーニのデュオ盤について語っていて、あれ〜、そう言えば、なんかもう一枚、一風変わったチックのデュオ盤があったぞ、と思い至った。何だっけ。引っ掛かる思い出は、ちょうど社会人駆け出しのバブル期の頃なんだが。ちょうど1980年代半ばくらいにリリースされた盤と狙いを定め、チックのディスコグラフィーを確認する。
で、やっと判った。この盤である。Chick Corea & Steve Kujala『Voyage』(写真左)。邦題『果てしない旅』。1984年、ECMレーベルからのリリース。ECMの1282番。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p), Steve Kujala (fl)。チック・コリアとスティーブ・クジャラ、ピアノとフルートのデュオである。
スティーブ・クジャラって、何者やったっけ。あんまり聞かない名前である。調べてみたら、スティーブ・クジャラはチック・コリアによって見いだされたフルート奏者、とのこと。聴けば、クジャラのフルート、実に巧い。流麗かつ静的なエモーション。クラシックか、と問えば、その即興性溢れるプレイは、やはりジャズ寄り。
さて、このデュオ盤『Voyage』である。ジャズでもクラシックでも通りそうなこの内容は、サウンド面から感じるのは、アドリブもあるクラシック、というような趣き。チックの個性と相まって「クラシカル&ラテン」な雰囲気が濃厚。演奏の底にジャジーなビート感は希薄。ジャズとはかけ離れた「希薄なビート感」の中で、ジャズの真骨頂である「自由度の高いインタープレイ」が展開される。
この硬軟自在、緩急自在、変幻自在なジャズ的なインプロビゼーションでありながら、ジャズの様に温度感は高く無く、どちらかと言えば、温度感の低い展開が、このデュオ演奏の聴きどころであり、このデュオ演奏の個性である。このジャズ的な自由度の高いインプロビゼーションでありながら、アドリブもあるクラシック演奏という趣きは聴く人を選ぶだろう。
希薄なビート感、それでいて自由度の高いインタープレイ。明らかに欧州系ジャズの音世界。やはり、この音の内容って、ECMレーベルならではやなあ、と感心する。そして、相手をしっかりと選んで、相手の特質と特徴を十分に理解し、極上のデュオ演奏を繰り広げるチックって、やはりデュオ演奏の名手やなあ、と改めて思う。
★東日本大震災から6年9ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« チックとボラーニのデュオ演奏 | トップページ | 何から何までぶっ飛んだ盤 『Super Nova』 »
コメント