« 明らかに新しいジャズ・オルガン | トップページ | 第1期RTFの裏の好盤です。 »

2017年12月14日 (木曜日)

ECMレーベルらしい音・7

ECMレーベルの初期の頃のアルバムには「フリー・ジャズもの」が多い。恐らく、1970年代前半、欧州のジャズ界は「フリー・ジャズ」のブームだったんだろう。というか、欧州のジャズ者の方々は「フリー・ジャズもの」が好きだ。一定量のフリー・ジャズ者が何時の時代にも存在するみたいだ。

Jan Garbarek『Triptykon』(写真左)。1972年11月の録音。ECM1029番。ちなみにパーソネルは、Jan Garbarek (ss, ts, bs, fl), Arild Andersen (b), Edward Vesala (perc)。ノルウェー出身のサックス奏者、ヤン・ガルバレクの5枚目のリーダー作。ECMレーベルでは、『Afric Pepperbird』『Sart』に続く3枚目。

ECMレーベル独特の、抑制の効いた、切れ味の良い怜悧な音世界が個性の「フリー・ジャズ」が全編に渡って展開されている。コルトレーンの様ではあるが、コルトレーンの様な「汗飛び散る様な熱気」は全く無い。この盤は「青く怜悧な熱気」に覆われている。随所にエキゾチックなルーツ音楽の要素が散りばめられていて、欧州のフリー・ジャズやなあ、と妙に感心したりする。
 

Triptykon

 
ガルバレクのサックスはコルトレーンのマナーを踏襲しているが、演奏時のアドリブ・フレーズの展開や旋律の調子は、何となく「オーネット・コールマン」の様な雰囲気を感じる。欧州フリー・ジャズの特徴なんだが、米国フリー・ジャズのいいとこ取りをしつつ、音世界の雰囲気は明らかに「欧州」な雰囲気を前面に押し出す。このガルバレクのフリー盤も同様に傾向をしっかり踏襲している。

ラストのノルウェー民謡である「Bruremarsj」が実に良い雰囲気。典型的な欧州フリー・ジャズの展開を踏襲していて、聴いていて、とても楽しい。素朴でメロディアス、ルーツ・ミュージックな雰囲気がプンプンして、フリーなアドリブ展開も全く気にならずに、楽しんで聴ける。こういう欧州ルーツ・ミュージックをベースにしたジャズ演奏って、勿論、米国には無いもので、ECMレーベルのアルバムの良い個性でもある。

しかし、これだけ徹底したフリー・ジャズって、どれだけ、一般のジャズ者の方々に訴求するのだろう。欧州ではそれなりに市民権は得ている、とは言うが、人数はかなり絞られるのでは無いだろうか。ガルバレクのフリーなテナーはテクニックが確かなので、耳触りでは無い。ECMレーベルのフリー・ジャズを知るのに、格好の一枚である。
 
 
 
★東日本大震災から6年9ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

« 明らかに新しいジャズ・オルガン | トップページ | 第1期RTFの裏の好盤です。 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ECMレーベルらしい音・7:

« 明らかに新しいジャズ・オルガン | トップページ | 第1期RTFの裏の好盤です。 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー