ECMレーベルらしい音・7
ECMレーベルの初期の頃のアルバムには「フリー・ジャズもの」が多い。恐らく、1970年代前半、欧州のジャズ界は「フリー・ジャズ」のブームだったんだろう。というか、欧州のジャズ者の方々は「フリー・ジャズもの」が好きだ。一定量のフリー・ジャズ者が何時の時代にも存在するみたいだ。
Jan Garbarek『Triptykon』(写真左)。1972年11月の録音。ECM1029番。ちなみにパーソネルは、Jan Garbarek (ss, ts, bs, fl), Arild Andersen (b), Edward Vesala (perc)。ノルウェー出身のサックス奏者、ヤン・ガルバレクの5枚目のリーダー作。ECMレーベルでは、『Afric Pepperbird』『Sart』に続く3枚目。
ECMレーベル独特の、抑制の効いた、切れ味の良い怜悧な音世界が個性の「フリー・ジャズ」が全編に渡って展開されている。コルトレーンの様ではあるが、コルトレーンの様な「汗飛び散る様な熱気」は全く無い。この盤は「青く怜悧な熱気」に覆われている。随所にエキゾチックなルーツ音楽の要素が散りばめられていて、欧州のフリー・ジャズやなあ、と妙に感心したりする。
ガルバレクのサックスはコルトレーンのマナーを踏襲しているが、演奏時のアドリブ・フレーズの展開や旋律の調子は、何となく「オーネット・コールマン」の様な雰囲気を感じる。欧州フリー・ジャズの特徴なんだが、米国フリー・ジャズのいいとこ取りをしつつ、音世界の雰囲気は明らかに「欧州」な雰囲気を前面に押し出す。このガルバレクのフリー盤も同様に傾向をしっかり踏襲している。
ラストのノルウェー民謡である「Bruremarsj」が実に良い雰囲気。典型的な欧州フリー・ジャズの展開を踏襲していて、聴いていて、とても楽しい。素朴でメロディアス、ルーツ・ミュージックな雰囲気がプンプンして、フリーなアドリブ展開も全く気にならずに、楽しんで聴ける。こういう欧州ルーツ・ミュージックをベースにしたジャズ演奏って、勿論、米国には無いもので、ECMレーベルのアルバムの良い個性でもある。
しかし、これだけ徹底したフリー・ジャズって、どれだけ、一般のジャズ者の方々に訴求するのだろう。欧州ではそれなりに市民権は得ている、とは言うが、人数はかなり絞られるのでは無いだろうか。ガルバレクのフリーなテナーはテクニックが確かなので、耳触りでは無い。ECMレーベルのフリー・ジャズを知るのに、格好の一枚である。
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