ジャズ喫茶で流したい・115 『Open Sesame』
若い頃、フレディ・ハバードが苦手だった。周りが超一流のジャズメンの場合はまだ大人しくしているんだが、周りが自分より若い、もしくは、一段低いレベルのジャズメンだったりすると、途端に前へグイグイ出て吹きまくる。とりわけ、自分がリーダーのアルバムについては、絶対に前へ出て目立ちまくって吹きまくる。
これが凄く耳につく時があって、ハバードのリーダー作は敬遠していた。当方も歳をとって、ハバードの目立ちたがり屋もそれはそれで可愛いところがあるよな、と思えるようになって、何時の頃からか、そう50歳を過ぎた頃から、ハバードのリーダー作をしっかりと聴く様になった。これがまあ、とにかく上手い。歌心よりも何よりもテクニックよろしく目立ちたがる、吹きまくる。
しかし、そんなハバードにも、初リーダー作の時代があった。Freddie Hubbard『Open Sesame』(写真左)。1960年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Tina Brooks (ts), McCoy Tyner (p), Sam Jones (b), Clifford Jarvis (ds)。よくよく見れば、実にユニークな人選である。まず、ベテランな先輩ジャズメンがいない。基本的に若手から中堅で固めている。
さすがにハバードの初リーダー作である。当時23歳。さすがに若い。確かに、この若さで、周りをベテランな先輩ジャズメンで固めたら、バリバリとテクニック良く吹きまくる、ハバードの個性が陰る危険性がある。恐らく、ブルーノートの総帥アルフレッド・ライオンはそのリスクを未然に防いだ感がある。
決して、前に出てバリバリに吹きまくることは無い。他のメンバーの音を良く聴きながら、時にユニゾン&ハーモニーに溶け込み、アドリブ・ソロに入っても、吹きまくることは無い。堅実に確実にテクニック豊かなアドリブ・ソロを吹き進めていく。これだけ、神妙でかつ堅実なハバードは後にも先にも、このリーダー作のみと思われる。
しかし、抑制の美と言う言葉があるが、このハバードの初リーダー作を聴いていて、その「抑制の美」を強く感じた。テクニックも抜群、馬力もあって、となれば、この初リーダー作の様に抑制の美を発揮しつつ、しっかりと歌心を追求する、としていけば、恐らく、マイルスの逆鱗に触れることもなかったろうに、とつくづく思う。
アルバムの演奏全体に漂うマイナー調、どっぷりブルージーな雰囲気は、思いっきり「ジャズ」を感じることが出来る。ハバードのトランペットもしっかりとブルージーに鳴り響く。そして、ティナ・ブルックスのちょっとマイナーにピッチがズレたような哀愁のブロウがそんなブルージーな雰囲気を増幅させる。昔、我が国のジャズ喫茶の人気盤だったと聞くが、それも十分に合点がいく。
ブルーノート・レーベルの音が満載。ハードバップの良いところがギッシリと詰まった好盤である。この盤を聴く度に「ハードバップ・ジャズ」ってこういう演奏を言うんやなあ、と感心する。ジャケットもしっかりとブルーノートしていて、やっぱりこの盤はいいなあ、と思うのだ。この盤でのハバードは「粋」である。
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