爽やかに捻れ、悠然とモーダル 『Adam's Apple』
ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)は実にユニークなテナー・マン。インタビューなんかでは、真顔で「自分は宇宙と交信しながらテナーを吹いている」。宇宙との交信の成果が、ショーターの個性的なアドリブ・フレーズを生むということだ。彼のテナーは唯一無二。捻れたテナーなのだが、そのフレーズは、メインストリーム・ジャズど真ん中。モダン・ジャズの王道を行くテナーである。
確かに、初めて聴いた時、この人のテナーは唯一無二だと思った。テナーと言えば「コルトレーン」。コルトレーンは自由度を求めれば求めるほど、フリー・ジャズに、アバンギャルド・ジャズに傾倒し、一般のジャズ・ファンを失っていった。しかし、ショーターは違う。ショーターは自由度を求めれば求めるほど、爽やかに捻れ、悠然とモーダルに変化する。そして、一般のジャズ・ファンを惹き付ける。
Wayne Shorter『Adam's Apple』(写真左)。1966年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (p), Reggie Workman (b), Joe Chambers (ds)。ジャズ界は「多様化」の時代。ショーターは新主流派と呼ばれる、新しい響きを宿したモーダルがメインの自由度の高いジャズ。
ショーターのテナーのアドリブ・フレーズって、ほんとに「ユニーク」。他を寄せ付けない、フォローを許さない、思いっきり個性的な捻れ方。真似出来ない、予測が出来ない捻れ方をする。しかも、テナーの音色が豊か。太くてシャープで流麗。しかも余裕を噛ました悠然としたロングなアドリブも得意で、このショーターのテナーって、他のテナー・マンには決して真似が出来無い。
ピアノは、若き日のハービー・ハンコック。ワンフレーズ聴けば直ぐに「ハービーやなあ」と判るくらいに個性的なフレーズを叩き出している。本当に、この頃のハービーのピアノは「イカしている」。理知的で幾何学的、ほど良く抑制された、意外と高速なパッセージ。左手のブロックコード、右手の自由度の高い弾き回し。この頃のハービーって輝いている。
レジー・ワークマンのベースが面白い。モーダルなフロントのアドリブ・フレーズには、こういうモーダルなベースと当てろ、というような、新主流派にとっての「教科書」の様なウォーキング・ベースに惚れ惚れする。このリズム隊が、アルバム全体を統制し、アルバム全体をコントロールする)。
純ジャズなショーターのテナーを愛でるに最適な一枚。ジャケットもブルーノート・レーベル独特のデザイン性の溢れた素晴らしいもの。内容も決して難しく無く、取っ付き易い。ジャズ者初心者の方々にも安心してお勧め出来る好盤です。
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