ドラムでモードをやっている
ドラマーがリーダーの作品って、録音されたその時代の最先端を行くジャズのパフォーマンスの「トレンド」を採用し、展開するケースが多い。自らも先進的なドラミングを披露しつつ、パーソネルの人選もそれを意識して、最先端を行くジャズのパフォーマンスを体現できるジャズメンをチョイスする。
例えば、Pete La Roca『Basra』(写真左)。1965年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Pete La Roca (ds), Joe Henderson (ts), Steve Kuhn (p), Steve Swallow (b)。録音年とパーソネルを見ただけで、このアルバムに詰まっている音が「只者では無い」ことが容易に想像出来る。
Pete La Roca=ピート・ラロカと読む。ラロカのドラミングは、一聴すると「あれ、ロイ・ヘインズかな」と思うんだが、聴き進めるにつけ、このドラマーの持つ、よりモダンで現代的な響きと、整然としているが重心が低く、ちょっと野太い音が「ロイ・ヘインズとは異なる」。叩き方がまるでドラムでモード・ジャズをやっている感じなのだ。
ピート・ラロカの、ドラムでモードをやっている様な、限りなくフリーだが伝統的な枠内にギリギリ残ったドラミングが、今の耳にも新鮮に響く。この自由度の高いモダンなドラミングに鼓舞されて、これまた、モード・ジャズの申し子の様な、モーダル・テナーの第一人者、ジョーヘンがウネウネブララ〜と吹き上げる。
そこに不思議なラインとタイム感覚を持ったスワローのベースが底を支える。そして、耽美的な響きではあるが、切れ味良く妖気漂う様な、少し危険な響きが芳しいスティーヴ・キューンのピアノ。冒頭の「Malaguena」なんて、イスラムを感じさせる独特なメロディーラインにラテンな雰囲気を塗したような、妖艶な捻れが魅力のモード・ジャズの典型。
とにかく「アクの強い」ドラマーがリーダーの盤。こういう先進的な音をしっかりと捉えてアルバムとして後世に残しているなんて、さすがブルーノート・レーベルである。後にジャズ・ドラマーから弁護士に転職するという変わった遍歴を持つピート・ラロカ。しかし、こういう先進的なリーダー作を残し、後世に名を残している。たいしたものである。
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