ドラムの個性は演奏の個性 『Paris Jam Session』
ドラム。打楽器である。素人目には「誰が叩いても同じ音がする」ように感じる楽器だが、実はそうでは無い。叩き方も様々、叩き方が変わると音も変わる。叩き方もそれぞれドラマーによって「癖」があって、それが個性になる。単に「叩く」だけの楽器なのだが、意外と奥が深い。
ジャズにおいても、聴き込むにつけ、ドラムの個性を感じるのが楽しい。ジャズ者初心者の頃はフロント楽器、サックスとかトランペットとかに耳が行ってドラムの妙技に耳を傾ける事はほとんど無い。ピアノ・トリオを聴くにしたって、メインのピアノを聴くことが多く、ドラムとベースは付けたしになることが多い。
しかし、ジャズにおいて、ドラムの個性はとてもバラエティーに富んでいて、大いに楽しめる。初心者の頃は、どうしてもフロント楽器の音に耳を奪われてしまうので、なかなかドラムの音に耳を傾ける事が少ないのだが、ジャズを聴き込むにつれ、ドラムの音の個性に気がつき、その個性を聴き分けることが出来るようになる。
例えば、この盤。Art Blakey『Paris Jam Session』(写真左)。1959年12月18日の録音。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp), Wayne Shorter (ts), Jymie Merritt (b) は全曲に渡って、Walter Davis Jr. (p) は3-4曲目のみに参加、Barney Wilen (as), Bud Powell (p) は1-2曲目のみに参加。
ジャズ・ドラムのレジェンドの一人、アート・ブレイキー率いる「ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」がパリに訪れた時に、フランス出身のアルト・サックス奏者、バルネ・ウィランとパリに移住していた、モダン・ジャズ・ピアノの祖、バド・パウエルをゲストに迎えたセッションを記録したもの。
これ、バルネ・ウィランとバド・パウエルがゲスト参加した1〜2曲目が聴きもの。フランス出身のアルト・サックス奏者とモダン・ジャズ・ピアノの祖、バド・パウエルが参加している。フロント楽器にフランス出身のアルトの音、ピアノには、ビ・バップ・スタイルのピアノの音が「混入」しているのにも関わらず、その演奏の音は「アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」になっている。
明らかに演奏全体の音の雰囲気を決定付けているのが、アート・ブレイキーのドラミング。個性溢れるアート・ブレイキーのドラミングがバックに流れると、そのジャズの演奏は「アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」の音になる。「ナイアガラ瀑布」と形容されるドラム・ロール、ドラミングの合間に入る「カカカカカ」という合いの手。フロントを鼓舞するスネアの音。これらは明らかに「ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」の音なのだ。
ドラムの音に耳を傾け、注意深く聴き込めば、ジャズ・ドラムの音は、意外と演奏全体の雰囲気を決定付ける重要な要素の一つになっていることに気がつく。そう、ジャズ・ドラムは面白い。このジャズ・ドラムの音に耳を傾け、ジャズ・ドラム毎の音の個性の違いに気がつく様になると、ジャズ鑑賞の耳は「ジャイアント・ステップ」することになる。
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