ながら聴きのジャズも良い・20
しばらく、サックスやトランペットがフロントのカルテットやクインテットなジャズを聴き続けてきたような気がした。ちょっと耳が疲れてきたとでも言うのでしょうか。そろそろ、サックスやトランペットをお休みして、一番大好きなピアノ・トリオの盤を聴きたくなった。
といっても、このところ、なんだか心身共に疲れ気味なので、ハードなピアノ・トリオよりは、マイルドで優しいピアノ・トリオが聴きたい。が、あまりにマイルドでイージー・リスニング的なカクテル・ピアノっぽいのは逆に「イライラ」するから敬遠したい。適度に芯があって、硬派ではあるがマイルドで優しいピアノ。ということで、選んだ盤がこれ。
Eddie Higgins『Portrait In Black and White』(写真左)。1996年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Higgins (p), Don Wilner (b), James Martin (ds)。
Eddie Higgins(エディ・ヒギンス)といえば、ヴィーナス・レコードのハウス・ピアニスト。マイルドで優しい雰囲気のピアノ・トリオ盤を多数リリースしている。中にはあまりにマイルドすぎて、イージー・リスニング的なカクテル・ピアノ風になってしまっている盤もある。しかし、エディ・ヒギンスのピアノって、意外と硬派でバップなピアノなんですね。
しかしながら、ヒギンスのピアノには突出した個性が見当たらない。つまり一聴して「ああ、これは誰それのピアノだ」と判る位の個性や特徴が希薄。流麗かつ耳当たりの良いアドリブ・フレーズなので、どうしても、イージー・リスニング的なカクテル・ピアノ風に解されることが多い。でも、まともにアルバムを聴くと判るのだが、ヒギンスのピアノは硬派でバップだ。
1932年生まれなので、ハードバップ時代は新進気鋭の若手、1960年代から70年代は中堅のピアニストだったはずだが、1958年の初リーダー作から、この『Portrait In Black and White』が録音されて1996年まで38年の間に、わずか12枚のリーダー作を数えるだけなのだ。如何に地味なピアノ・スタイルの持ち主なのかが理解出来る。
この『Portrait In Black and White』辺りの盤が、そんな硬派でバップなヒギンスのピアノを感じることができる好盤だと思う。聴けば判るのだが、確かに突出した個性は無い。しかし、演奏全体の雰囲気より、総合力で勝負できるピアニストであることは確かである。どこがどうってことは無いんだが、トータルで、随所随所に聴きどころが散りばめられた、破綻の無い素性の良い流麗なピアノである。
そうなれば、演奏する曲の選曲も重要な要素になってくる。そういう面では、ヴィーナス・レコードと組んだのは大正解だった。日本人のジャズ者にターゲットを絞った選曲と音作りは大正解だった。その最初の成果がこの『Portrait In Black and White』である。この盤には、ヒギンスのピアノの個性、いわゆる総合力で勝負するジャズ・ピアノという個性が十分に理解出来る。
アルバム・ジャケットも後のヴィーナス盤の様な「エロエロ」したところは無く、なかなか雰囲気のあるジャケットで良し。エディ・ヒギンスって、イージー・リスニング的なカクテル・ピアノでしょ、と敬遠する向きには、是非とも聴いて貰いたい。意外と良いですよ。
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