初めてのジェシカ・ウィリアムス
昔も今もジャズ喫茶は隅に置けない。とりわけ、老舗ジャズ喫茶はさすがである。時折、これ誰のアルバム、これって何時のアルバム、と思わず席を立って、ジャケットを確認しに行きたくなるような好盤が流れたりする。例えば、このアルバムなんかがそうだ。僕は思わず、席を立って、ジャケットを確認しに行った。
Jessica Williams『Higher Standards』(写真左)。1997年のリリース。ちなみにパーソネルは、Jessica Williams (p), Dave Captein (b), Mel Brown (ds)。ジャズ・レーベルの老舗「Candidレーベル」からのリリース。抜群に音が良い良好盤である。
1997年のリリースなので、Candidレーベルが発足した1960年前半当時の音のトレンドとはちょっと異なるが、骨太で臨場感のある、優秀な録音は当時から変わらない。また、ジャズの中で先進的なスタイルを追求するジャズメンをチョイスしてアルバムをリリースするところも、1960年代前半のCandidレーベル創始時代ゆずりである。
ジェシカ・ウィリアムスはユニークな女性ピアニスト。日本では人気が無い。僕もこのアルバムに出会って、その名前を初めて知った。収録曲を見渡すと、本作はタイトルから類推して、有名スタンダード・ナンバーを中心にした演奏集であることを想定する。で、最初の「Get Out of Town」を聴くと、このジェシカの個性が一気に理解出来る。
いきなりフリーな前奏から始まる。このピアニスト、フリー専門か〜、と思うのだが、テーマに入ると、ぐっとオーソドックスなスタイルに落ち着きつつ、タイム感覚は「これモンクのフォロワーか」と思う位に、モンクっぽいタイム感覚とライン取りに思わず、ニンマリする。とアドリブ展開に入ると、全くもってオーソドックスでハードバップな音が止めども無く出現してきて、思わずニンマリ。
フリーキーな面も見え隠れするが、基本的には「ネオ・ハードバップ」。モーダルな響きはほとんど無く、オーソドックスな展開の部分は明らかに「ハードバップ」。モーダルな雰囲気は殆ど無い。そういう意味で、このジェシカ・ウィリアムスというピアニストは、1997年の録音ということを鑑みると、意外とユニークな存在ではある。
フリーキーで限りなく自由度の高い尖ったスタイルと、とにかく伝統的でオーソドックスな「ネオ・ハーオバップ」なスタイルとが、入り混じった不思議な個性を醸し出している。タッチは強い。しかし、そんな強いタッチの中に繊細な響きが見え隠れして、このピアニストが女性であることを再認識する。地味ではあるがユニークな個性であることは事実。
フリーキーな面とオーソドックスな面をいったりきたりする演奏だが、意外と安定感があって聴き心地は良い。ほんのりと短くフリーな展開が存在するので、色々なジャズのスタイルを、このピアノ・トリオ盤一枚で体感できるという面は、ジャズ者初心者に向けてもお勧め出来る盤ではある。1990年代以降の「ネオ・ハードバップ」の好盤の一枚である。
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宜しくお願い申し上げます。
彼女のピアノタッチ、そこから紡がれる創音のドラマがえもいわれぬ魅力です。
投稿: あとむくん | 2023年10月26日 (木曜日) 16時01分