キャンディドらしい音・5
キャンディド・レーベルには「よくぞ録音してくれた」的なマニア盤も存在する。何故かなかなか録音の機会に恵まれない優秀なジャズメンや、そもそも録音の機会が少ないユニークなジャズメンにスポットを当てて、しっかりと録音している。プロデューサーのナット・ヘントフの功績であろう。
例えばこのアルバム、『The Toshiko-Mariano Quartet』(写真左)。1960年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Toshiko Akiyoshi (p), Charlie Mariano (as), Eddie Marshall (ds), Gene Cherico (b)。我らが日本人ピアニスト穐吉敏子と、当時、夫婦の間柄であった、アルトサックス奏者チャーリー・マリアーノとの共同リーダー作である。
内容的には新しい響きを宿しているハードバップである。マリアーノのアルトは硬質でテクニカル。フレーズは幾何学的でクール。モードでは無いのだが、響き的にはモーダルな雰囲気が漂っている。これが意外に新しい。ユニーク。ジャズ・アルトと言えばパーカーが絶対だが、このマリアーノのアルトは、パーカーの影響下から少し距離を置いている。
穐吉敏子のピアノも新しい響きを宿していて聴き応えがある。もともと穐吉のピアノは、筋金入りのビ・バップなピアノ。明らかにパウエル派のバップ・ピアノなんだが、この盤での穐吉のピアノは、そんなバップ・ピアノな雰囲気に加えて、モーダルなフレーズが見え隠れする。加えて、テクニックが凄い。高速なアドリブ・フレーズが凄い。
5曲目の「Long Yellow Road」が特に素晴らしい。そこはかと漂う愁い。音の「間」とマイナーな余韻。激しさと静謐さが入り交じり、何処か狂おしさもある、何処か侘しさもある。演奏全体を覆う「侘び寂び」、アドリブ・フレーズに忍ぶ「いとおかし」の空気。これぞ「日本人の創るジャズ」の好例。
これだけ、内容的に優れた演奏を繰り広げる「Toshiko-Mariano Quartet」ではあるが、あまり録音の機会は多く無かった。そういう面では、このキャンディド・レーベルでの録音は貴重なものであることは疑いない。キャンディドらしく、録音も良好。もっともっと聴かれても良い好盤だと思います。
震災から6年。決して忘れない。まだ6年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっとずっと復興に協力し続ける。
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