キャンディドらしい音・1
キャンディド・レーベル(Candid Label)。ポップス・シンガーとして有名なアンディ・ウィリアムスを社長とするケーデンス・レコードのジャズ専門の子会社として1960年にスタート。監修者にジャズ評論家として名高いナット・ヘントフを迎え、ジャズメンの志向、意向をストレートに演奏に反映することをポリシーに活動したが活動期間はわずか2年。
活動期間はわずか2年と短いが、キャンディド・レーベルに残されたアルバムはいずれも内容が濃い。キャンディドならではのアルバムも存在する。代表的なものとしては、チャールズ・ミンガスやセシル・テイラーや、あるいはブッカー・リトルやブッカー・アービンのリーダー作はいずれもキャンディドらしい内容である。
わずか2年の活動の中でアルバム化されたアルバムは27枚。そんな僅か27枚については、全てのアルバムを俯瞰して見ると、いかにもキャンディド・レーベルらしいものばかりである。例えば、Benny Bailey『Big Brass』(写真左)。CJM 8011番。1960年11月の録音。
ちなみにパーソネルは、Benny Bailey (tp), Julius Watkins (French horn), Les Spann (fl, g), Phil Woods (as, b-cl), Tommy Flanagan (p), Buddy Catlett (b), Art Taylor (ds)。 フレンチ・ホルンの参加がユニーク。ピアノのトミフラ、アルトのウッズ、ドラムのテイラーなど、要所要所に粋なジャズメンが脇を固める。
クインシー・ジョーンズ・オーケストラの花形ソリストとして活躍したビ・バップ出身のトランペッター、ベニー・ベイリーのリーダー作である。ベイリーのリーダー作は20枚弱とそんなに多く無い。1960年代は5枚程度。この『Big Brass』は初リーダー作になる。ベイリーの艶やかなトランペットの音色が実に印象的。
加えて、ジュリアス・ワトキンスのフレンチ・ホルンとのアンサンブルにより、ベイリーのトランペットのフレーズに厚みが加わる。アルバム全体を通じて優れたアレンジが印象的で、アルバム全体にとても内容の整ったハードバップな雰囲気が蔓延している。音の厚みと中低音域の充実した音圧は、キャンディド・レーベルならではのもの。
「現代のジャズにおいては、ラウドでビッグな音やハイノートをヒットするばかりが良きトランペットとは限らない」という言葉が頭をよぎる。1950年代半ばまではラウドでビッグな音やハイノートをヒットするばかりが良きトランペットであった。しかし、1960年代に入るに従い、その基準は揺らぎ、ジャズ・トランペットは深化していった。そんなジャズ・トランペットの深化を感じるベイリーの初リーダー作である。
ちなみに新生キャンディド・レーベルは「英キャンディド」としてロンドンに本社をおき、ステイシー・ケントやジム・トムリンソン等の新録音等を活発に始めている。
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