クールなピアノ・トリオの音です
寒い。とびきり寒い。雪である。雪が降っている。鉛色の空から白い雪が降ってくる。こういう時に音楽を聴くなんて、と思う人もいるんだろうが、僕はそうは思わない。こういう時こそ、こういう特別な瞬間に合うジャズは無いか、とアルバムを物色する。
身が切れるほどに寒い日には、クリスタルな硬質な響きのピアノが良い。切れ味の良い硬質な響きのドラムが良い。鋼の様なしなやかで硬質なアコベの音が良い。静謐感溢れる、耽美的ではあるが決して甘くない、逆に甘さを一切排除したストイックでクリスタルな響き溢れるピアノ・トリオが良い。
Jim Black Trio『The Constant』(写真左)。2015年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Jim Black (ds), Elias Stemeseder (p), Thomas Morgan (b)。ピアノ・トリオである。Jim Black(ジム・ブラック)はドラマー。このピアノ・トリオのリーダーはドラマー。ドラマーとベースが米国出身、ピアニストはオーストリア出身。面白い組合せ。どんな音が出てくるんだろう。
リーダーのジム・ブラックは、1967年8月、米国はシアトル生まれ。今年で50歳、ベテランの域である。僕はこのアルバムに出会うまで、このジム・ブラックの名前を全く知らなかった。そういう意味ではピアノもベースも初見。このアルバムを初めて手にした時はどんな音が出てくるのか、皆目見当がつかなかった。
クールなピアノ・トリオの音である。ファンクネスは全く皆無。音だけ聴けば「欧州ジャズ」の系列の音。バップな雰囲気は皆無。静謐で耽美的でクールなピアノ・トリオの響きが淡々と続く。それでも、リズム&ビートはしっかりしていて静かな躍動感が演奏全体を包む。ブラックのドラムとモーガンのベースの相性の良さと絶妙な絡みの成せる技。
ステメスダーのピアノが良い。ずばり、クリスタルな硬質な響きのピアノ。彼はオーストリアはザルツブルクの生まれ。1990年生まれだから、今年27歳の将来有望な若手ピアニスト。時にアブストラクトに現代音楽風のプレイや響きを聴かせてくれる。ファンクネスは皆無。明らかに明快に「欧州ジャズ・ピアノ」の音と響き。
ブラックのドラムの響きも明らかに「欧州ジャズ」のドラミング。ファンクネスは皆無。甘さを一切排除したストイックでクリスタルな響きが個性の、切れ味の良い硬質な響きのドラムである。時にフリーなアブストラクトなドラミングがシュール。静謐感と躍動感が相まみえた、切れ味の良い硬質な、それでいてしなやかなドラミング。
リーダーのドラマーとベースが米国出身なのに、アルバム全体の音世界はオーストリア出身のピアニストの個性によって決定されている。現代の欧州ジャズの音世界。身が切れるほどに寒い日にピッタリな雰囲気の静謐感。ピアノの自然さに対するベースとドラムが迫り来る音。好盤です。
震災から5年10ヶ月。決して忘れない。まだ5年10ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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