ピアノ・トリオの代表的名盤・58 『Smile』
僕にとって、ジャズの中では「ピアノ・トリオ」が一番。もともとピアノは幼稚園から小学校時代、8年間習っていたので、ちょっとは弾ける。ピアノを弾く、ということが追体験できるので、やっぱり、他の楽器と比べると、ピアノが一番判り易いし、一番聴いていて楽しい。ということで、今日は「ピアノ・トリオ」。
Jacky Terrasson『Smile』(写真左)。パーソネルは、Jacky Terrasson (p), Sean Smith (ac-b), Eric Harland (ds), Remi Vignolo (el-b, tracks 2,4,5)。基本はピアノ・トリオ。曲によって、ベースをエレベとアコベと使い分けている。2002年6月の録音。
僕は、このJacky Terrasson(ジャッキー・テラソン)のピアノが好きだ。デビュー作の『Jacky Terrasson』からずっと彼のリーダー作は聴き続けている。この人のピアノは、バリバリ弾きまくる「バップ」なタッチなんだが、フレーズがメロディアスで、雰囲気は「ビル・エバンス」に近い。いわゆる「力強いビル・エバンス」って感じだと僕は解釈している。
初めて聴いた時は、あまり心に引っ掛かる特徴が無くて、ちょっと地味やなあ、と思ったりするんだが、聴き込むほどに、その「力強いビル・エバンス」的な弾き回しが徐々に心に沁みてくる。そして、彼のバリバリ弾きまくる「バップ」なタッチとメロディアスなアドリブ・フレースが癖になる。そうすれば、彼のリーダー作の楽しみ方は「収録曲それぞれのアレンジと弾き回し」一点になる。
そういう点では、このアルバムは合格点。まず、タイトル曲の「Smile」が良い。というか、僕はこの曲が入っていたら、どんなアルバムでも「ウエルカム」状態になるほど、この曲が好きだ。しかも、このテラソンのピアノ・トリオのアレンジ、テラソンの弾き回しが抜群なのだ。ほんと、この盤の「Smile」は良い。
5曲目の「Isn't She Lovely?」も良い。スティーヴィー・ワンダーの名曲なんだが、シンプルに原曲の旋律を右手で弾きつつ、ドラムの音がリズムの底を支える。ユニークなアレンジ。テラソンの右手の手癖の個性が面白い。こういうアレンジも面白い。ジャズの面白さを感じる。
7曲目の「Nardis」も叙情的で良い響きだし、4曲目の「Sous le Ciel de Paris」、8曲目の「Autumn Leaves」のシャンソンの名曲の内容がこれまた良い。こうやって聴いていると、このアルバム、収録曲の原曲自体がどれも魅力的で、そんな魅力的な収録曲をテラソンのピアノ・トリオが個性的にアレンジして、メロディアスなアドリブ展開にして聴かせてくれる。
この盤、テラソンのピアノ・トリオの好盤の一枚に挙げて良い、なかなか充実した内容の好盤だと思います。最初聴くと、ちょっと地味かな、なんて思うんですが、どうして時々思い出した様に引っ張り出して聴き込んでいくと、どんどんその小粋な内容に惹き込まれていく。そんな噛めば噛むほど味が出る「スルメ」の様な味わいのピアノ・トリオ盤です。
★震災から5年11ヶ月。決して忘れない。まだ5年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« ラリー・コリエル、追悼です | トップページ | スウェーデン・ジャズの好盤 »
コメント