音楽喫茶『松和』の昼下がり・45 『In Tune』
さて、今年もクリスマス週間である。昔々、大学時代、12月18日から25日クリスマスまでの1週間を、僕達は「クリスマス週間」と読んだ。確か、この週間にクリスマス礼拝があって、クリスマス・キャロルがあって、クリスマス・イヴを迎える。サンタの格好をして、近所の幼稚園や老人ホームに慰労訪問に行く。
あの時代、そんなクリスマス・シーズンによく聴いたアルバムがこれである。大学2回生のクリスマス・シーズン、例の「秘密の喫茶店」で聴かせて貰った。爽やかで確かなコーラス・グループとピアノ・トリオ。ジャズにこんな爽やかで優しい音世界があるのか、と思わず感じ入った。
The Oscar Peterson Trio & The Singers Unlimited『In Tune』(写真左)。1971年7月の録音。シンガーズ・アンリミテッドとオスカー・ピーターソン・トリオとのコラボ。収録された曲目を見れば、決して、このアルバム、クリスマスなジャズ盤では全く無い。
しかし、シンガーズ・アンリミテッドのコーラスの雰囲気がそうさせるのだろうが、敬虔で厳か、それでいて爽快で流麗な雰囲気は、今の季節にフィットする。シンガーズ・アンリミテッドのコーラスは端正で淀みが無い。このコーラスで、様々なスタンダード曲を歌い上げていく。
バックのピアノ・トリオの音も良い。初めて聴いた時、どっかで聴いたピアノ、誰だっけ、と思った。ジャズ者駆け出し2年生がである(笑)。それもそのはず、ジャズ者初心者でまずは手を出すピアニストの一人、オスカー・ピーターソンである。
ピーターソンは歌伴が抜群に上手い。バックに回れば、絶対に前面に出ず、しっかりとフロントのボーカルを支える。ボーカルが映えるような、ボーカルが浮き出る様なバッキング。これって、相当なテクニックが無いと出来ない技である。そして、アドリブ・ソロが回って来ると、テクニック全開でバーンとメリハリ良く展開する。
そんな素晴らしいピーターソン・トリオのバッキングを得て、シンガーズ・アンリミテッドが唄いまくるアルバム。このアルバム、我が国ではマイナーで、ジャズ盤紹介本などでもその名前が挙がることは無い。いわゆる「ジャズ喫茶盤」である。
この盤、最初の曲がかかると、ジャズ喫茶の雰囲気が「おおっ」という感じで、明るい雰囲気に変わる。そして、曲が流れると思わず頬が緩む。ニコニコしながら、リズムを取りながら、気持ち良く聴く。
その曲とは「Sesame Street」。米国のマペットキャラクターを使った子ども向けテレビ教育番組のテーマソング。僕達が中学生の頃、始まった番組。親しみが湧く。「Can You Tell Me How to Get to Sesame Street?」。
良いアルバムです。クリスマス企画盤では全くないのですが、この季節にぴったりとフィットしたアルバムです。ジャズ喫茶の昼下がりに、ちょっと皆が微睡みかけた頃、不意打ちの様にかけると意外に「受ける」好盤です。
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