ノラ・ジョーンズ第2章の幕開け
まあ、この人のやる音楽を、どこかの音楽ジャンルの一つに押し込める事自体がナンセンスだと思っているのだが、今回の新盤については「ノラがジャズに帰って来た」と喧しい。「帰って来た」というが、じゃあ今までどこへ行っていたんだ(笑)。
その新盤とは、Norah Jones『Day Breaks』(写真左)。今年の10月のリリース。通算6作目のリーダー作となる。タイトルが意味深で「Day Breaks(夜明け)=ノラ・ジョーンズ第2章の幕開け」という解釈になるらしい。加えて、この盤は「ノラ・ジョーンズのピアノ回帰」。久しぶりにアルバム12曲全編でピアノを弾いている。
ピアノを弾いているからジャジー、いわゆる「ジャズの回帰」と単純に感じている訳では無い。オリジナル曲の旋律が確実にジャジーなのだ。これだけジャジーな旋律であれば、やはり伴奏楽器のメインはピアノが相応しい。
ホレス・シルヴァーの「ピース」、デューク・エリントンの「アフリカの花」、そしてニール・ヤングの「ドント・ビー・ディナイド」のカバー曲3曲が良い出来だ。アレンジが秀逸。伴奏の雰囲気が、ノラの歌声にピッタリとフィットする。
2016年のジャズ・ボーカルの新盤である。レガシーな「どジャズ」なボーカルでは全く無い。基本的にはポップス系の素直でウェット感満載のフュージョン風のボーカル。しかし、歌唱力抜群なので、むっちゃ聴き応えがある。パーソネルを見渡せば、その錚々たるメンバーにとにかくビックリする。ノラがジャジーなアルバムを制作するというだけで、これだけの面子が集まるんやね〜。
自身のルーツであるジャズをベースに、米国ルーツ・ミュージックの要素を織り交ぜながら、ルーツ・ポップな独特な音世界を創造するノラ・ジョーンズは凄みすらある。スケールの大きいボーカリストになったもんやなあ、と感心することしきりである。バックの演奏も高度でメロディアス。バックの演奏自体がジャジーな要素を増幅している。
このアルバムの感じで「ザ・バンド トリビュート」な企画盤を作ってくれないかなあ。絶対に良い企画だと思うんだけど。ジャズへの回帰、なんて宣伝してますが、決してノラのボーカルは、正統なジャズ・ボーカルではありません。ノラの歌唱はあくまでノラの歌唱そのもの。ジャズとかロックとか、どこかの音楽ジャンルの一つに押し込めること自体がナンセンス。
しっとりと落ち着いた好盤だと思います。ゆったりとアルバム全体を聴き通してしまいます。狭義の意味での「ジャズ・ボーカル」を期待して聴くと違和感を感じると思います。
ノラの歌唱を「ジャズ・ボーカル」とするのには無理があるので、そこはしっかり割り切らないと、この新盤を評価し損ねることになります。それはあまりに惜しい。強い先入観を持たずに聴くことが、この新盤を愛でるコツかもしれませんね。
震災から5年9ヶ月。決して忘れない。まだ5年9ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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