人生の黄昏をジャズで表現する
現代のジャズは、様々なジャンルの楽曲を選択しジャズ化する。ミュージカルや映画の主題歌や挿入歌、これは、ジャズ・スタンダード曲として定着している。60年代以降はポップスやロックの楽曲を取り込み、70年代以降はワールドミュージック系の楽曲をも取り込む。まあ、現代ではジャズ化の対象は「何でもあり」の感がある。
このアルバムは、黒人霊歌や賛美歌、トラディショナルなどを中心とした選曲で構成されている。米国ルーツ・ミュージックがベースのこの構成は、ジャズの世界では「ありそうで無い」。
Charlie Haden & Hank Jones『Come Sunday』(写真左)。2010年2月の録音。録音時、ピアノのハンク・ジョーンズは91歳、ベースのチャーリー・ヘイデンは72歳。ちなみに、ハンク・ジョーンズがこの世を去るわずか3ヶ月前の録音になる。
ジャズ盤としては珍しく、明確な4ビートの演奏は少ししかない。しかし、淡々としたピアノとベースの語り合いの中で、ゆったりとしたジャジーなビートは漂っている訳で、そこは大ベテランの二人、一筋縄ではいかない。若くて硬派なジャズ者の方々からすると、あんまりにノンビリしていて「これはジャズじゃない」と言いそう。
このデュオ、枯れ具合が抜群。淡々とした滋味深いタッチで、黒人霊歌や賛美歌、トラディショナルなどの米国ルーツ・ミュージックを弾き紡いでいくハンクのピアノは実に味わい深い。そのピアノに呼応するするようにな訥々としたベース。ベースの哲人、チャーリー・ヘイデンの面目躍如です。
しかし、ただ枯れている訳ではありません。ピアノにもベースにも音の中にしっかりとした芯がある。素朴な旋律の連続である黒人霊歌や賛美歌、トラディショナルなどの米国ルーツ・ミュージックが、何故かふくよかに豊かにゴージャスに響く。ジャズのアレンジの成せる技。二人の匠の成せる技。敬虔な想いに包まれます。
丁々発止の4ビートジャズを想定すると相当にフラストレーションが溜まると思いますが、この滋味深い枯れた味わいのデュオ演奏はなかなかに聴きどころ満載。人生の黄昏を音でジャズで表した様な演奏。こういう表現が出来る音楽って本当に素晴らしい。
★震災から5年8ヶ月。決して忘れない。まだ5年8ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« ヤン・ハマーという鍵盤奏者 | トップページ | ジョンスコの「C&Wのジャズ化」 »
コメント