音楽喫茶『松和』の昼下がり・43
1950年代のハードバップを基本としたメンストリーム・ジャズは、いつの時代にも「鉄板」である。我々ジャズ者を始めとして、素人の方々にとっても、聴いてみて「ああ、これはジャズやなあ」と感じるのは、このハードバップを基本としたメインストリーム・ジャズであろう。
ただ、このハードバップを基本としたメインストリーム・ジャズは「理路整然」としていて、カッチリと整っているので、ちょっと変化に乏しい。というか、ジャズ者ベテランのレベルになると、演奏の先読みが出来てしまうので、聴き過ぎると結構「飽きる」。でも、時々、この理路整然、カッチリと整ったメインストリーム・ジャズを聴くと、やっぱりジャズはええなあ、と感激したりする。
Harry Allen & Vladimir Shafranov『Dear Old Stockholm』(写真左)。今日聴いた、ハードバップを基本としたメインストリーム・ジャズのアルバムである。2016年7月ストックホルムでの録音、アルバムとしては先月のリリース。ちなみにパーソネルは、Vladimir Shafranov (p), Harry Allen (ts), Hans Backenroth (b), Bengt Stark (ds)。
Vladimir Shafranov(ウラジミール・シャフラノフ)は、ロシアはサンクト・ペテルブルグ生まれ。1980年代、ニューヨークに活動拠点を移す。1999年、日本の「澤野商会」からリーダー作がリリースされ、日本における「欧州ジャズ・ピアノ」の認識に大きな影響を与えたピアニストとされる。
Harry Allen(ハリー・アレン)は、1966年10月、米国はワシントン生まれ。アレンのテナーは、非常に整然としていて破綻が無い。スタイルはややオールド・スタイル寄りのテナー。ジャズ・テナーの世界でよくある「コルトレーン・テナーのフォロワー」では無い。理路整然、整いまくったオールドスタイルの雰囲気漂う、骨太なテナーはアレンならではの個性。
確かに、この新盤『Dear Old Stockholm』は、確かにシャスラノフのピアノとアレンのテナーの出来が目立つ。「Dear Old Stockholm」や「Besame Mucho」を始めとして、この盤には有名な、若しくは知る人ぞ知る「粋」なスタンダード曲で固められており、このスタンダード曲の枠の中で、フロントを司るシャスラノフとアレンが、各々が何処まで自由にアドリブ・フレーズを展開するところが聴きどころになる。
アルバム全体の雰囲気は、明確に「欧州メインストリーム・ジャズ」。どのスタンダード曲もしっかりほ弾きこなし、吹きこなす。徹頭徹尾、絵に描いた様な「理路整然、カッチリと整ったメインストリーム・ジャズ」。ゆったりと安心して聴けるハードバップである。しかも、バックのリズム・セクションの演奏レベルも高い。スネアの抜けるような音、ブンブン唸るアコベの心地良い響き。ジャズ喫茶の昼下がりがこの盤をかけるのが一番の時間帯かも、です。
さすがはヴィーナス・レコード。ジャケットも風景写真をあしらった地味なもの。通常の「少しエロチックな」ジャケットでは無い。それだけにこのアルバムに詰まったメインストリームなジャズに相当な自信があると見た。ああ〜心地良いジャズやな〜、とリラックスして聴き込める良いアルバムです。
震災から5年8ヶ月。決して忘れない。まだ5年8ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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