こんなアルバムあったんや・67
ジャズという音楽ジャンルは、とにかく裾野が広い。こんなミュージシャンが、こんなミュージシャンと共演しているんや、とパーソネルを見てびっくりすることがよくある。どう考えても「ロック畑」オンリーなミュージシャンがジャズをやったりする。しかも、それが「聴き応え十分」だから始末が悪い。誰が演奏しているのだか、さっぱり判らなくなる。
Bill Bruford, Eddie Gomez & Ralph Towner『If Summer Had It's Ghosts』(写真左)。最近出会った「さっぱり判らない」ミュージシャンの組合せ盤がこれ。1997年2月の録音。3人のミュージシャンの共同リーダー作。
ドラムのBill Bruford(ビル・ブルーフォード・写真右)は、英国のプログレ・バンド「イエス」そして「キング・クリムゾン」のドラマーであり、アースワークスを率いて、エレクトリックなコンテンポラリー・ジャズもこなすレジェンド。
ベースのEddie Gomezは、長年ビル・エバンス・トリオの常任ベーシストとして活躍。ドラムのスティーブ・ガッドと組んで、フュージョン・ジャズでも活躍。特に純ジャズ系の演奏では結構なセッションの数をこなしてきたレジェンドである。
ギターのRalph Townerは、ECMレーベルを中心に活躍してきた「ニュー・ジャズ」な響きを湛えたアコギが個性。多作では無く、他のセッションへの参加も少ないが、この個性的なアコギは、ジャズ・ギターにおけるスタイリストの一人として認知されている。
冒頭のタイトル曲「If Summer Had Its Ghosts」を聴けば、実に良く出来たコンテンポラリーな純ジャズな演奏にウットリする。素晴らしいなあ。特に、ブルーフォードのドラミングが効いている。他のジャズ・ドラマーに無い、乾いた小気味良いポリリズム、ファンクネス皆無の切れ味の良いオフビート。ブルーフォードのドラミングの面目躍如。
そんなブルーフォードのドラミングに、エディ・ゴメスの独特の骨太で硬質なベースがしっかりとアクセントを付ける。リズム&ビートに彩りを添える、唄う様なエディ・ゴメスのベース。唯一無二の個性的なリズム・セクション。
そこに、硬質でクリスタルな響きを湛えて、ラルフ・タウナーのアコギが旋律を奏でる。タウナーはストローク・プレイに独特の響き(特に12弦)があって直ぐに彼のプレイと判る。決して黒っぽく無い、明らかに欧州ジャズ的なクラシックな響きが心地良い。ブルーフォード+ゴメスのリズム・セクションの音の「質」にぴったり合ったタウナーのアコギ。
で、このアルバムを聴き進めていて、どうにもこのアルバムで出てくるピアノが誰のピアノなのかが判らない。聴いていて、かなり素性の良い、テクニックも申し分無いジャズ・ピアノである。しっかりとタッチに個性があり、アドリブ・フレーズは流麗で端正。明らかに欧州ジャズ系のピアノの音なんだが誰だか判らない。
そして、遂にパーソネルをカンニングすると、なんと「ラルフ・タウナー」のピアノではないか。そう言えば、タウナーってピアノも弾くって聞いたことがある。しかし、こんなに上質で端正な正統派なジャズ・ピアノを弾きこなすとは思わなかった。実は僕はタウナーのピアノを、このアルバムで初めて聴いた。感心した。
ジャケットを見ると、これECMレーベルのアルバムか、って思うんだが、実は英国の「Summerfold」からのリリース。しかし、このジャケットのイメージって、ECMレーベルのパクリのような雰囲気やなあ。まあ、アルバムの中身の音もECM風なので良しとしますか(笑)。
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