音楽喫茶『松和』の昼下がり・42
先週末から、やっと秋らしい涼しさとなった我が千葉県北西部地方。今朝などは最低気温14度。涼しいを通り越して寒いくらい。ここまで涼しくなると、やっとジャズ鑑賞についても、硬派な純ジャズなどを聴く気になる。そして季節は秋。抒情的なアドリブ・フレーズに耳を傾けたくなる。
こういう秋たけなわな気候になると、決まって聴きたくなるジャズ盤が何枚かある。そんな中の一枚がこれ。Art Farmer『Sing Me Softly Of The Blues』(写真左)。邦題「ブルースをそっと歌って」。なんと情緒的な邦題であることよ。秋のこの季節にぴったりではないか。
1965年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (tp,flh), Steve Kuhn (p), Steve Swallow (b), Pete LaRoca (ds)。 当時、新進気鋭な、尖ったモード・ジャズが得意のスティーブ・キューン・トリオをバックに、アート・ファーマーのトランペット&フリューゲル・ホーンのワンホーン・カルテット。
アート・ファーマーの抒情的な面がよく表われた作品ではある。が、よくよく聴くと、バックのスティーブ・キューン・トリオの演奏が聴きもの。時は1965年。この新進気鋭のトリオは、徹頭徹尾、モーダルなジャズで、アート・ファーマーのバックを務める。とにかくキューンのピアノのアドリブ・フレーズの自由度が圧倒的に高い。モードのピアノはこう弾く、とでも言いたげな圧倒的にモーダルな展開。
リーダーであるアート・ファーマーのアドリブ・ソロが面白い。バックのスティーブ・キューン・トリオの演奏に引き摺られて、ファーマーもモーダルなアドリブ・ソロを披露する。おおっこれはなかなか、と身を乗り出したりするのだが、モーダルなソロは長続きすること無く、コードが基本の旧来のハードバップなブロウが見え隠れ。どっち付かずの「モードとコード」の交錯。
逆にバックのスティーブ・キューン・トリオは終始モーダルなジャズに没頭。ベースのラインは捻れまくっているし、ドラムは自由度の高いリズム&ビートを叩きだし、その上をキューンのピアノが乱舞する。ファーマーのフリューゲル・ホーンが無くても、トリオとして演奏が成立するくらいの圧巻な演奏。
タイトルとファーマーの抒情的なフリューゲル・ホーンの音色が、ちょっとロマンチックでメランコリックな雰囲気を押しだしてくる、と思いきや、バックのスティーブ・キューン・トリオのモーダルなバッキングのお陰で、演奏全体の雰囲気は、甘いというよりは真逆の、ちょっとビターで硬派な、ややフリー寄りの演奏という感じがする。
ジャケットも抒情的な雰囲気満載なので、ロマンチックでメランコリックな内容を想起するんですが、その先入観はこのアルバムにとっては危険。リーダーのファーマーのフリューゲル・ホーンの抒情性を抑制して、意外とビターで硬派な自由度の高いモーダルなジャズがメイン。この盤、ジャケットに騙されてはなりません(笑)。
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