音楽喫茶『松和』の昼下がり・41
日本ではこのサックス奏者は印象が薄い。印象が薄いというか、人気が低い。そのサックス奏者とは「ジジ・グライス(Gigi Gryce)」。米国では作曲家として、それなりの位置付けにあるらしいが、日本ではサッパリである。
ジジ・グライスは1925年生まれ。存命であれば91歳であるが、実は1983年、57歳で鬼籍に入っている。ジジ・グライスのジャズメンとしての活動期間は意外と短く、だいたい1953年から1965年の約10年位である。以降、経済状態や心理状態の問題から、ジャズ界から退いた状態になった。
ジジ・グライスはアルト・サックス奏者であるが、作曲家としての評価の方が高いのかもしれない。メインストリーム・ジャズの古典的スタンダード曲である「マイノリティ(Minority)」や「ソーシャル・コール(Social Call)」、「ニカズ・テンポ(Nica's Tempo)」は、ジジ・グライスの作曲である。
そのひとつをタイトルに戴いた好盤がある。Gigi Gryce『Nica's Tempo』(写真左)。1955年10月の録音。ジャケットの雰囲気を見れば直ぐに判る、Savoyレーベルからのリリース。ノネット、テンテット、もしくはカルテットの構成。ジジ・グライスは、全てのトラックでアルト・サックスを担当している。
このジジ・グライスのアルト・サックスの音が良い。オーソドックスなスタイルのアルト・サックスの音色なんだが、これが良い。自作曲とモンクの曲でのジジ・グライスのアルト・サックスが良い雰囲気を醸し出している。とにかく、ジジ・グライスのアレンジが良好なんですね。
特に、大人数の構成、ノネットやテンテットでのジジ・グライスのアレンジは実に優秀。音の重ね方がオーソドックスで端正。明らかに「ハードバップ」って感じのする、音の重ね方と響きが独特の個性。実に端正でオーソドックスなアレンジである。
このジジ・グライスのアルバム『Nica's Tempo』には、ジジ・グライスを感じ、ジジ・グライスを理解する為のアイテムが、必要最低限のレベルでしっかりと詰まっています。ハードバップ初期の正統なジャズ。何度聴いても飽きの来ない好盤だと思います。
余談であるが、ジジ・グライスはジャズ界から身を引いた後、最晩年には公立学校で教鞭を執っている。グライスの生涯で最後の勤務先となった小学校は、その遺功を讃えて「バシール・カシム・スクール」に改名されている。ちなみに「パシール・カシム」とは、ジジ・グライスのイスラム宗での名前である。
震災から5年6ヶ月。決して忘れない。まだ5年6ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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