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2016年9月30日 (金曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・40

ジャズのアルバムの中には、若い頃に一度聴いて、その時は何が何だか判らないまま終わって、暫く経ってから、もう一度聴きたいなあ、と思うアルバムがある。そして、得てしてそういうアルバムはなかなか再会出来なかったりするのだ。

僕にとって、このアルバムがそんなアルバムである。Marion Brown 『Vista』(写真左)。1975年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Marion Brown (as), Stanley Cowell, Anthony Davis (p, el-p), Bill Braynon (celeste, el-p), Reggie Workman (b), Jimmy Hopps (ds), Ed Blackwell (ds, slit drums), Jose Goico (congas, tambourine), Allen Murphy (vo, bells), Harold Budd (celeste, gong)。

アルトのマリオン・ブラウン、そして、このパーソネルを見渡すと出てくる音は、本能、感情のおもむくまま吹きまくる「フリージャズ、若しくはスピリチュアル・ジャズ」と思うのだが、これが違う。冒頭の「Maimoun」を聴けば、思いっきり肩すかしを食らう。

明らかに、本能、感情のおもむくまま吹きまくる「フリージャズ、若しくはスピリチュアル・ジャズ」では無い。正統な伝統的な純ジャズ近い、しかも、旋律が美しく聴き易い。モーダルでクロスオーバーなコンテンポラリー・ジャズの趣きも見え隠れする、極上の純ジャズの世界。

あのジョン・コルトレーンのフリー・ジャズの問題作『アセンション』にも参加した、コッテコテのフリー者のマリオン・ブラウンである。思いっきりフリーにスピリチュアルに吹きまくるかと思いきや、ソウルフルでメロディアス、モーダルでクロスオーバーなコンテンポラリー・ジャズをやるのだ。
 

Vista1

 
今の耳で聴くと、現代のスピリチュアル・ジャズに通じる、ソウルフルでメロディアスな響きにハッとする。美しい、切れ味良く、そして、心揺さぶられ、心和む。現代のスピリチュアル・ジャズに通じる音が、今から40年ほど前、1975年に創造されていたことに素直に感動する。

初めて聴いた時は、ジャズを聴き初めてまだ2年。なんだか中途半端な内容やな、と思った。本能、感情のおもむくまま吹きまくる「フリージャズ、若しくはスピリチュアル・ジャズ」でも無い。といって、ソウルフルでメロディアスなフュージョン・ジャズでも無い。といって、ハードバップでも無い。なんだこれ、と思った。

リズム&ビートも正統な純ジャズ風。とりわけ、リーダーのマリオン・ブラウンのアルト・サックスの音がよく鳴っていて美しい。この作品はよく「フュージョン・ジャズだ」といわれの無い評価を受けることがままあるアルバムですが、どうして、このアルバムは、今の耳で聴くと、極上の「スピリチュアル・ジャズ」である。

ジャケットも前衛美術的で印象的でスピリチュアルなもの。このジャケットにぴったりの音が、このアルバムにぎっしりと詰まっています。音楽喫茶『松和』の昼下がりにピッタリな、1970年代のメインストリーム・ジャズの好盤の一枚です。

 
 

震災から5年6ヶ月。決して忘れない。まだ5年6ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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