音楽喫茶『松和』の昼下がり・38 『The Complete Paris Collection Vol.1&2』
我が千葉県北西部地方。相変わらず湿度の高い日が続いているが、気温は知らない間に下がっている。朝夜は涼しく、当然、エアコン要らず。家にいてジッとしている分にはもう夏では無い、秋である。
涼しくなってくると、純ジャズが聴きたくなる。というか、純ジャズが落ち着いて聴ける様になる。暑いと純ジャズを聴き込むのは、精神的にちと辛い。純ジャズを聴き込むのはやはり秋から冬のシーズンが良い。そういう意味で、秋の気配を感じると、毎年、純ジャズを聴き込みたくなる。
特に、1950年代のレジェンドの残したハードバップな盤が良い。今日、選んだ盤は、Clifford Brown『The Complete Paris Collection Vol.1&2』(写真)。1953年10月の録音。ハンプトン楽団に帯同してヨーロッパ・ツアー中に、パリでバンドのメンバーと一緒にヴォーグに録音された好盤である。
録音された音自体、古さを感じさせる録音で、決してクリアな音源では無い。明らかに、1950年代前半の時代がかった音。中波のラジオを聴くような、エッジの丸い籠もった様な音。しかし、そんな良好では無い音の状態の中で、クリフォード・ブラウンのトランペットの音だけが突出している。
輪郭クッキリ、ブラウニーのトランペットのフレーズが朗々と流れていく。そのアドリブ・フレーズは流麗かつメロディアス。ゴツゴツしたところが全く無い、考慮や思索が全く感じられない、自然体のアドリブ展開。中波のラジオを聴くような、エッジの丸い籠もった様な音のトーンの中で、音の輪郭がクッキリと見える。
ブラウニーとジジ・グライスとの双頭セクステットで、アンリ・ルノーなどフランスの名手を迎えたハードバップな演奏の数々。ハードバップといっても、成熟した頃の長時間の創造的なアドリブと揺るぎの無い整然としたユニゾン&ハーモニーでは無い。まだまだ、1940年後半のビ・バップの雰囲気を色濃く残した演奏である。
これがシンプルで良い。小難しくなく、ただただブラウニーのトランペットとジジ・グライスのアルト・サックスの明快な音の輪郭がしっかりと耳に残る。何の変哲も無いバップな演奏なんだが、聴いていて何だか心地良い。特にミディアム・テンポ以上の曲においては、ブラウニーのトランペットは無敵である。
音がちょっと悪くても、心地良く聴くことの出来るアルバムがある。この『The Complete Paris Collection Vol.1&2』は、そんなアルバムの好例である。
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