音楽喫茶『松和』の昼下がり・37
ジャズの定盤、有名盤というものはジャズ者初心者の頃によく聴いた。そんな定盤、有名盤をベテランの域に達した頃に聴き返すのはちょっと照れる。ジャズ喫茶で、ジャズの定盤、有名盤がかかると、思わず少し、はにかんだりする。
音楽喫茶『松和』の昼下がり。昼ご飯で満ち足りた状態で、ちょっと微睡みながら聴く盤は、ちょっとマニアックで、明らかにジャズっぽい盤が良い。明らかにジャズっぽいと言えば「ハードバップ」期のアルバム。それも、コッテコテのハードバップ。ということは、ブルーノート・レーベルの盤が良い。
ということで、今回選んだ盤がこれ。『Here Comes Louis Smith』(写真左)。1958年2月の録音。ブルーノートの1584番。ちなみにパーソネルは、Louis Smith (tp), Cannonball Adderley【credited as "Buckshot La Funke】(as : tracks 1-3, 5 & 6), Tommy Flanagan (p : tracks 3, 4 & 6), Duke Jordan (p : tracks 1, 2 & 5), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds)。
聴けば直ぐに...「誰だか判らない(笑)」。このトランペット、誰だ、と心の中が騒然となる。ブラウニーかと思いきや、こんなに音が丸く無いし、決してマイルスでは無い。ドナルド・バードはエッジが立っているし、ディズはもっとあっけらかん。誰だこれ、となる。で、ジャケットを見て納得する。「ルイ・スミスかぁ」。
このルイ・スミスのトランペットの音とフレーズが良い。徹頭徹尾「ハードバップ」な雰囲気が満載。テクニック良く、音は円滑。特徴が薄いと言えば薄いが、教科書の様なハードバップなトランペットに、ほのかに「哀愁」が漂うところにグッとくる。音の響きがそこはかとなく「ジャジー」。収録された全6曲中4曲がルイ・スミスの作曲。どれもが良い曲ばかりで、作曲の才も優れていることが良く判る。
バックのリズム・セクションも良い。曲によって担当が変わるが、どちらも「燻し銀ピアニスト」のトミフラとデューク・ジョーダン。ベースは堅実かつ太くて鋼の様なウォーキング・ベースが個性のダグ・ワトキンス、そして、ハードバップのファースト・コール・ドラマーの一人、アート・テイラー。
このリズム・セクションの音だけでも、十分に満足出来るくらいの「魅惑的な」ハードバップなリズム・セクションである。そして、フロントで鳴り響くルイ・スミスのトランペットとキャノンボールのアルト。ここでのキャノンボールはルイ・スミスとのバランス重視な堅実かつ紳士なアルトを聴かせてくれる。
ハードバップ期の隠れ好盤。どの楽器も良く鳴っていて、テクニックも優秀。さらに、ブルーノートの特徴でリハーサルを十分に積んだ演奏なので、出来がとても良い。破綻無し、よれた所無し。ハイレベルのハードバップ演奏がこの盤に詰まっている。耳当たり良く、音楽喫茶『松和』の昼下がりにピッタリ。ホンワカ良い雰囲気です。
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