新主流派のジャズ・ヴァイブ
ジャズ・ヴァイブ奏者のボビー・ハッチャーソン(Bobby Hutcherson)が亡くなった。8月15日のことである。享年75歳。
僕はヴァイブの音が好きだ。流麗で豊かで伸びのある響き、転がる様な疾走溢れる音。そんな楽器でジャズをやる。これがまた良い。ジャズの持つファンクネスにヴァイブという楽器がしっかりとフィットするのだ。マイナーな音の響きがジャジーな音階、マイナーな音階にフィットする。
ジャズ・ヴァイブと言えば「ミルト・ジャクソン」である。ミルトのジャズ・ヴァイブは絶対である。当然、僕もミルトのヴァイブのアルバムは良く聴いた。そして、ミルトを聴き続けて、5年ほど経ってからかなあ、ボビー・ハッチャーソンに出会った。
ハードバップ全盛以降の1963年がリーダー作デビューなので、ハッチャーソンのヴァイブはハードバップなヴァイブでは無い。ハッチャーソンのヴァイブは「新主流派」のヴァイブである。モーダルであり、フリーであり、アーティステックである。
そんなハッチャーソンのヴァイブの音の個性を感じるには、このアルバムが最適だろう。2枚目のリーダー作(当時では初リーダー作)になる、Bobby Hutcherson『Dialogue』(写真左)。1965年4月の録音。ブルーノートの4198番。
ちなみにパーソネルは、Bobby Hutcherson (vib), Sam Rivers (ts, ss, b-cl, fl), Freddie Hubbard (tp), Andrew Hill (p), Richard Davis (b), Joe Chambers (ds)。このパーソネルを見れば、このアルバムから出てくる音が容易に想像出来る。演奏に参加した面々は皆が「新主流派」。
冒頭の「If Ever I Would Leave You」を聴けば良く判る。ハードバップな雰囲気は微塵も無い。モーダルで限りなくフリーな演奏。現代音楽に通じる硬質でクリスタルな響き。そんな演奏の核はもちろん「ハッチャーソンのヴァイブ」。ハッチャーソンのヴァイブは「新主流派のジャズ・ヴァイブ」である。
さすがはブルーノートだと思う。ハッチャーソンの新主流派ヴァイブに合ったメンバーをしっかりと集め、おそらくはブルーノートらしく、リハーサルをしっかり積んでの録音だと思う。しかも、メンバーの志向を理解して、リーダーの表現したい音をしっかりとサポートする。やはり、アルフレッド・ライオンのプロデュース力は凄い。
ハッチャーソンは意外と硬派なミュージシャンで、この「新主流派のジャズ・ヴァイブ」のスタイルを生涯貫き通した。ミルト・ジャクソンが「ジャズ・ヴァイブの王様」であるなら、ハッチャーソンは「ジャズ・ヴァイブの騎士」だろう。そんなハッチャーソンも今はもうこの世にいない。ご冥福をお祈りしたい。
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ボビー・ハッチャーソンの逝去をこのサイトで知りました。
75歳ってまだ若いですよね。 本当にジャズマンは早死ですね。
ボビー・ハッチャーソンとの初めての出会いは、エリック・ドルフィーの「OUT TO LUNCH」でした。
ウネウネとしたドルフィーのバスクラに鋭く切り込むヴァイブに痺れました。
あと、アンドリュー・ヒルとかサム・リバース、それにジョー・チェンバースとかBLUE NOTEの新主流派というより、Freeに近い人たちと相性が抜群ですね。
人気盤の「Happeninngs」なんか、とても聴きやすくて物足りない感じもします。
一時代を築いた名奏者のご冥福をお祈りします。 合掌
投稿: 五右衛門 | 2016年8月18日 (木曜日) 14時12分