現代のスピリチュアル・ジャズ
「スピリチュアル・ジャズ」という言葉を聞くと、1960年代後半、フリー・ジャズの延長線上で、感情の赴くまま、激情的で精神性の高いブロウを延々と繰り広げる、アーチー・シェップやファラオー・サンダース、アルバート・アイラーなど、サックス奏者の名前が浮かびます。
この「スピリチュアル・ジャズ」は現代でも生きていて、最近、また結構、隆盛を極めつつあるのではないでしょうか。もともと、「スピリチュアル・ジャズ」は、アフリカン・アメリカンのジャズメン達が、精神的な故郷であるアフリカへの回帰、アフリカン・アメリカン独自の精神性などを追求した音楽です。ジャズが存在する以上、この「スピリチュアル・ジャズ」は無くなることはないのでしょう。
最近、この人の名前をちょくちょく聞く様になりました。Kamasi Washington(カマシ・ワシントン)。1981年生まれ。今年35歳のサックス奏者である。スピリチュアルなブロウが特徴で、現代の「スピリチュアル・ジャズ」の担い手といっても良いでしょう。そんなカマシがニュー・アルバムをリリースしました。
Kamasi Washington『The Epic』(写真左)。総勢60名以上のLAジャズ先鋭メンバーが参加した3枚組170分超えの超大作。この新作に、現代の「スピリチュアル・ジャズ」の音世界がギッシリと詰まっている。とっても魅力的な「スピリチュアル・ジャズ」。
1960年代後半の様な、フリー・ジャズの延長線上で、感情の赴くまま、激情的で精神性の高いブロウだけでは無い、スピリチュアルとバップとアフロが一体となった、ゴスペルの要素やブルースの要素、加えて「ネイチャー・ジャズ」な要素も併せて、聴き易く、印象的で、クオリティの高い、現代の「スピリチュアル・ジャズ」がここにある。
様々な音楽の要素を取り込んで再構築して、スピリチュアル・ジャズ的な音世界を現出しています。この音世界、とっても魅力的なんですよね。聴き易いアドリブの旋律に身を委ねつつ、時に感情の赴くまま、激情的で精神性の高いブロウに覚醒する。いやはや、確信犯的な「スピリチュアル・ジャズ」です。
リズムもフォービートではなくR&Bやファンク的なものが多く、アレンジは秀逸でバリエーション豊か、様々な音楽の要素を取り込んで再構築していて、いわゆる「真のフュージョン・ジャズ」と表現しても良いと思います。CD3枚組のボリュームなんですが、意外と一気に聴き切ってしまいます。
これから、この現代の「スピリチュアル・ジャズ」のコンセプトが意外とトレンドになっていくかもしれません。新しいジャズのスタイルとして、一気に広まる可能性を秘めた、そんなエポック・メイキングなカマシ・ワシントンの大作です。ジャズ者の皆さん、聴くべし、です。
震災から5年3ヶ月。決して忘れない。まだ5年3ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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はじめまして。失礼ながらも、カマシ・ワシントンも聴かれるということに驚きました。「Jazz the New Chapter」というムック本をチラ見していただきたいな、と勝手に思っています。2000年以降のジャズに絞って特集されている、(私にとっては、ですが)かなり興味深い切り口の本です。著者はtwitterでは@Elis_ragiNaです。ジャズは死んでない、現代ジャズはめちゃくちゃ面白いんだと実感することができた本でした。
投稿: 1973年生まれのラウズの居た時代のモンク好き | 2016年8月 4日 (木曜日) 01時34分