若きハービーの矜持を感じる 『Inventions and Dimensions』
3年ほど前から、ハービー・ハンコックのリーダー作の聴き直しを進めてきたのだが、まだ、ブルーノート時代のリーダー作が2枚、このブログに記事として残していなかったので、今回「落ち穂拾い」のシリーズである。
今日はこのアルバム。Herbie Hancock『Inventions and Dimensions』(写真左)。1963年8月の録音。ブルーノートの4147番。ハービーの3枚目のリーダー作になる。ちなみにパーソネルは、Herbie Hancock (p), Paul Chambers (b), Willie Bobo (ds), Osvaldo "Chihuahua" Martinez (per)。ピアノ・トリオ+パーカッション。
このアルバムの演奏を聴き通すと、このアルバムには、以前のアルバムにあったような、例えば「Watermelon Man」や「Blind Man, Blind Man」の様な、コマーシャルなファンキー・チューンが無い。徹頭徹尾、新主流派の音で充満している。モーダルでフリー気味な自由度の高い、アーティスティックなジャズで埋め尽くされている。
「Watermelon Man」や「Blind Man, Blind Man」のヒットのお陰で、ハービーも生活資金的にも一息ついたのであろう。この3枚目のリーダー作では、コマーシャルなファンキー・チューンでヒットを狙うこと無く、ジャズの未来を担うであろう若き有望なジャズメンとして、当時のジャズの最先端を目指している。
このハービーの姿勢に、ハービーのジャズメンとしての「矜持」を強く感じる。ハービーの才をもってすれば、コマーシャルなファンキー・チューンで再びヒットを狙うことだって出来たであろう。しかし、それをせずに、モーダルでフリー気味な自由度の高い、アーティスティックなジャズを目指し、それを体現する。これぞ、選ばれしジャズメンの理想的な姿であろう。
このアルバムをプロデュースしたブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオンもふるっている。こんなに、徹頭徹尾、新主流派の音、モーダルでフリー気味な自由度の高い、アーティスティックなジャズで埋め尽くされたアルバムが、ヒットするとは思えない。もしかしたら、ディープなマニアックなジャズ者だけが触手を伸ばすだけの「売れないアルバム」になる可能性が高い。
それでも、ブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオンは、このアルバムをこの内容でリリースする。しかし、だからこそ、僕達は21世紀になった今でも、この音源を通じて、1963年の若きハービーのモーダルでフリー気味な自由度の高い、アーティスティックなジャズを追体験することができるのだ。ライオンの英断に感謝である。
このアルバムは、ジャズの革新的な部分をガッツリと聴かせてくれる。そして、若きハービーの「ジャズの後を継ぐ者」としての矜持を感じることが出来る。決して、このアルバムの音は優しくないし、聴き易く無い。しかし、アートとしてのジャズがばっちりと記録されている。
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今日は。初めてコメントします。
私がジャズというものを知り、以後今日までジャズファンでいるきっかけにな
ったのがこのアルバムです。というか、ラジオで聞いたハービー・ハンコック
のジャズでした。それは1970年の6月の頃(学生でした)、昼寝をしながら聞
くともなしにラジオを聞いていると、リズミカルで何とも心持の良い、それまで
耳にしたことのない音楽が流れ、これはどういう音楽なんだろうと、夢うつつ
ながら聞いていました。やがて、一曲が終わるごとに本多俊夫(?)さんとい
う解説者が、曲の説明をしてくれて、これがジャズと言う音楽で、アルバム名
も教えてくれたので、忘れないように紙にメモしたのでした。それまではラテン
音楽位までは聞いていましたが、ジャズを(それと意識して)聞いたことはな
かったのです。サコタッシュ、トライアングル、ミモザ、という曲名もメモしたもの
です。
夏休みに入り、小田原の実家へ帰省するやレコード屋に行って、メモしておい
たLPアルバムを探すと幸いあったので買い込み、急いで家に戻りステレオに
かけ、おおこれだ、この曲だったと感激して何度も聴き込んだのでした。そして
これを起点に、ブルーノートの他のプレーヤー(アートブレーキー、ホレスシル
バー、バッドパウエル‥‥)へと、そしてジャズ全般へと興味が広がるのにそう
時間はかからなかったのです。
投稿: 平戸皆空 | 2016年6月29日 (水曜日) 08時38分