現代の「自由度の高い即興演奏」
こういうジャズが最初に流行ったのが1960年代半ば。限りなくフリーなモード・ジャズから入って、アドリブ部でも限りなくフリーなモード・ジャズを継続しながら、途中、思い余って、いきなりフリーに突入。しかし、それもしっかりと計算されていて、テクニカルでエモーショナル&スピリチュアル。あくまで、アーティスティックで自由度の高い即興演奏を目指す。
こういうジャズって、曲のテーマ部でも、アドリブ部でも旋律に親しみ易さ、聴き易さ、という面は希薄で、演奏面で、そのハイテクニックなところ、限りなく自由なアドリブ展開を創造していくところ、そういう面について感心したりするのだが、意外と繰り返し聴く「ヘビロテ盤」にはならない。
音楽ってやっぱり、テーマ部にしろ、アドリブにしろ、親しみ易い旋律と聴き易さを兼ね備えていないと楽しめないよな、と思う。そういう意味では、アーティスティックで自由度の高い即興演奏がメインのジャズって、時が経って目新しさが薄れると、そのニーズはどんどん減っていくんだろうな、と思っていた。
今年は2016年。21世紀に入って10年以上が経った。1960年代半ばからも既に50年、半世紀が経っている。それでも、こういうジャズのアルバムがリリースされるのだ。Murray, Allen & Carrington Power Trio『Perfection』(写真左)。
パーソネルを見れば、そのアルバムの音世界が想像出来るというもの。David Murray (ts, b-cl), Geri Allen (p), Terri Lyne Carrington (ds), Charnett Moffett (b), Craig Harris (tb), Wallece Roney (tp)。
限りなくフリーな重量級テナーマンのデヴィッド・マレイ、硬質で力感溢れるタッチとリリカルでフリーな展開が身上のピアニストであるジェリ・アレン、そして、鋭く尖った切れ味の良いワイルドなドラマー、テリ・リン・キャリントンの3人が平等に名を連ねたオールスター・トリオ「Power Trio」の新作である。
このアルバム、故オーネット・コールマンに捧げられたアルバム、とのこと。なるほど、とにかく限りなくフリーなモード・ジャズをメインに、アドリブの途中、フリーに展開。演奏内容はハイテクニックかつスピリチュアル。徹頭徹尾、アーティスティックで自由度の高い即興演奏である。
その内容は優れたものだ。テクニックも優秀、アドリブの展開もバリエーション豊かで、イマージネーションに優れる。実にアーティスティックな内容だ。しかし、である。その内容には感心するのだが、繰り返し聴く「ヘビロテ盤」にはならない。
アーティスティックなんですけどね。テーマ部にしろ、アドリブにしろ、親しみ易い旋律と聴き易さを兼ね備えていない分、どうしても繰り返し聴く気分にはならないんですよね〜。
しかし、今でもこういうストイックで即興演奏をメインとするジャズのニーズってあるんやなあ、と感心する。じゃないと、こういう新作がリリースされることは無いだろう。リリースするからには、このアルバムを購入する一定量のジャズ者が存在するということ。世界レベルで何人いるんだろう。
でも、またいつかこのアルバムの存在を思い出して、聴き返すと思います。何度も繰り返し聴くアルバムでは無いんですが、ストイックで即興演奏をメインとするジャズ、と思い出して、2010年代半ば辺りとした時に、このアルバムの存在を思い出すんではないか、と思っています。そんな印象を残す好盤です。
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