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2016年6月 7日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・53 『Still Live』

「それじゃあ、スタンダーズ・トリオで行くべ」ということで、正式に旗揚げした、キース・ジャレット率いるスタンダーズ・トリオ。まずは一発『Standards Live』(2015年9月10日のブログ)をリリース。

この『Standards Live』は、先ずはスタンダーズ・トリオの代表作の一枚。先ずは、このライブ盤を聴きながら、キースの考える、キースの美意識の塊であるスタンダーズ・トリオを体感し、実感する。つまりは、スタンダード曲をベースにした「即興要素」の強い、インプロビゼーションが中心の「インタープレイ」である。

これが受けに受けた。三者三様、それぞれがソロ演奏のスタイルを変えずに「インタープレイ」するだけなんだが、新しいスタンダード曲の解釈である、ともてはやされた。新しいピアノ・トリオの基準とも言われた。で、思いっきり気を良くしたキースとアイヒャーはLP2枚組のライブ盤をリリースする。

Keith Jarrett Trio『Still Live』(写真左)である。1986年7月、ミュンヘンのフィルハーモニック・ホールでのライブ録音。もちろんパーソネルは、Keith Jarrett (p), Gary Peacock (b), Jack DeJohnette (ds)。鉄壁の3人である。

収録された曲を見渡すと、あれまあ、どれもがほとんど「誰もが知っている大スタンダード曲」をズラリと並べている。あれれ、皆があまり知らない、魅力的なスタンダード曲を発掘して、聴き手の期待に応える、という点はどこへ行ったのやら。これはまあ、キースらしからぬ暴挙である(笑)。
 

Still_live

 
ビル・エバンスの持ち曲をメインに、キースの考える「インタープレイ」を展開する。「インタープレイ」の祖、ビル・エバンス・トリオに肉薄し、凌駕したかと言えば、実はそうでもない、というところが本音かな。

このスタンダーズ・トリオの「インタープレイ」の基本は、三者三様、それぞれが従来のソロ演奏のスタイルを変えずに「即興要素」の強いインプロビゼーションを展開すること。これって、別にキースの自作曲でも同じこと。スタンダード曲をメインに据えれば、その「マンネリ」リスクを回避できるという利点はある。

つまりは、このスタンダーズ・トリオのインタープレイは、トリオのメンバーそれぞれの、従来からのインタープレイの素晴らしさを再現している訳で、ビル・エバンス・トリオのインタープレイのアプローチとはちょっと異なるので、比較の対象にはならない。スタンダーズ・トリオのインタープレイはそれはそれで実に優れたパフォーマンスなのだ。

しかし、この大スタンダード曲のオンパレードはなんだ。まあ、その点は次作から修正されるので良しとしましょう(笑)。しかし、それが故にこのライブ盤は売れに売れました。「ベース、ドラム入りのケルン」と形容したジャズ者の方がいましたが、けだし名言でしょう。
 
 
 
★震災から5年2ヶ月。決して忘れない。まだ5年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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