ジャス喫茶で流したい・80
この「ジャズ喫茶で流したい」のコーナーでご紹介したクリフォード・ジョーダン。彼のリーダー作で、もう一枚、いわゆる「ジャズ喫茶が育んだ好盤」という類のアルバムがある。確かにこの盤もジャズ盤紹介本でまず見かけることは無く、ジャズ雑誌のテナーサックス特集にその名が挙がることが無い。
そのアルバムとは、Clifford Jordan『Glass Bead Games』(写真左)。1973年10月の録音。翌1974年のリリース。ちなみにパーソネルは、2つのカルテットに分かれる。一つは、Clifford Jordan (ts), Stanley Cowell (p), Bill Lee, Sam Jones (tr.12only) (b), Billy Higgins (ds)、もう一つは、Clifford Jordan (ts), Cedar Walton (p), Sam Jones (b), Billy Higgins (ds)。
パーソネルを見渡してみても、このアルバム、なかなか期待出来る雰囲気である。しかも、録音が1973年で、この頃のメインストリーム・ジャズって、それまでのジャズのスタイルのごった煮状態で煮詰まっている時代なので、このパーソネルをみると、かなりストイックで硬派なジャズが期待出来る。
しかし、である。このジャケット・デザインとリーダーがテナーのクリフォード・ジョーダンである。クリフォード・ジョーダンって、一言で言うと「シカゴ出身の地味ではあるが渋い味わいのあるテナー奏者」。ブルーノートなどにアルバムは残していて、無名では無いがメジャーとまではいかない。当然、この盤を前にすると「ううん〜」となる(笑)。
やはり、この盤は「ジャズ喫茶が育んだ好盤」なんだろうなあ。実はこの盤はジャズ喫茶で聴かせて貰った。まあ有り体に言うと、購入する勇気が無かった、ということである。で、ジャズ喫茶で聴かせて貰って、あらまあ、これは何、ということに相成った。
この盤が録音された頃のテナー・サックスと言えば、没後6年、まだまだコルトレーンの影響が大きかった。テナーの全てがコルトレーンの影響を大きく受けていた時代である。が、クリフォード・ジョーダンのテナーは様相が異なる。コルトレーンのプレイ、音色とはかなり違う。当時のテナー奏者からすると、コルトレーンからかなり遠いところにいるテナー奏者である。
これが良いんですね。当時、テナーのアルバムを売りたいなら、コルトレーンのスタイルを踏襲するのが手っ取り早いと思うんですが、このアルバムはそうじゃない。このアルバムは「Strata East」というレーベルからのリリースで、このレーベル、ブラック・アメリカンのミュージシャン達がブラック・アメリカンのための作ったレーベルで、他の数多レーベルとは根本的な成り立ちがちがう。
この『Glass Bead Games』は素直に実直に、メインストリーム・ジャズをガッツリとやるアルバムで、その当時のジャズのトレンドとか人気とか、そんなものを全く気にしていない。LP時代2枚組の大作なんだけど、聴いてみるとあっと言う間。それだけ、ジャズとして内容が濃く、充実しているのだ。
このアルバムは、とにかく、ジャズの好きな、ジャズ者中堅以上の方々に聴いて欲しいですね。コマーシャルな側面をバッサリとそぎ落とした、ストイックで硬派なジャズがこの盤にギッシリと詰まっている。クリフォード・ジョーダンの歌心溢れる骨太なブロウが思いっきり魅力的です。
震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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