ジャズ喫茶で流したい・78
ジャズ本になかなか挙がることの無い、もとよりジャズ入門盤になど絶対に選択されない、よってジャケットだって見たことが無い。それでも内容優秀なジャズのアルバムって実は沢山ある。そんな所謂「隠れ好盤」を見出すこと、これがジャズ盤コレクションの醍醐味のひとつである。
最近、そんな盤に出会った。『Young Men from Memphis - Down Home Reunion』(写真左)。誰がリーダーという訳では無い、ジャム・セッションを捉えたアルバムである。1959年4月15日の録音。ちなみにパーソネルは、Booker Little, Louis Smith (tp), Frank Strozier (as), George Coleman (ts), Phineas Newborn Jr. (p), Calvin Newborn (g), George Joyner (b), Charles Crosby (ds)。
アメリカ合衆国のテネシー州西端、ミシシッピー川に面する都市メンフィス。この街はブルースの発祥地としても有名な土地です。んなメンフィス出身のアーティストをフィーチャーしたジャム・セッションなアルバムです。
まず、パーソネルを眺めると、この盤が「只者で無い」ことが判ります。早逝のトランペットの天才、ブッカー・リトル(写真右)。小粋なハードバップなトランペッター、ルイ・スミス。モーダルなテナーの先駆者、ジョージ・コールマン。疾走する天才ピアニスト、フィニアス・ニューボーンJr.。この辺の名前をみると、どんな演奏が展開されているのか、ワクワクします。
冒頭の「Things Ain’t What They Used to Be」を聴くと、そのプレイの先進性が良く判ります。1959年なので、典型的な絵に描いた様な、優等生的なハードバップな演奏が繰り広げられているのではないか、と予想したのですが、前奏のテナーとトラペットのユニゾンの響きを聴いたら、これはまあ、只者ではないぞ、と身構えて(笑)。
ついつい座り直して、集中してその音に耳を傾けてしまいます。端正なハードバップなんてもんじゃない。これはもうフリー一歩手前の自由度の高いハードバップ。しかもそのフレーズはゴツゴツしていて骨太。そして、ところどころでモードな展開が今の耳にも新しい響きを持って展開される。
冒頭の1曲目のみならず、収録された全4曲とも「只者ではない」演奏で、当時としては突出して新しい、今の耳にも新鮮な響きがこのアルバムの中にギッシリと詰まっています。ジャム・セッションな演奏とは言え、息の合ったユニゾン&ハーモニーは聴いていて楽しく、アドリブのフレーズはどれもが新鮮な響きに溢れていて、全く時代を感じさせない。
良いアルバムです。出身地が同じというのも「好要素」になっているみたいで微笑ましいですね。ジャズ本やネットで採り上げられることが全く少ないアルバムなんですが、このアルバムは、ジャズを聴くことに慣れ、ジャズの好みがはっきりした中級以上のジャズ者の方々にお勧め。「目から鱗」の好盤です。
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>ジャズの好みがはっきりした中級以上のジャズ者の方々にお勧め。「目から鱗」の好盤です。
そうですね。^^長年ジャズをいろいろ楽しんでいますと、さまざまなスタイルを聞いた後には自分のジャズの好みがはっきりと出てきますね。
一般のクラシックやジャズのフアンで「所有するLP・CD」が数万枚なんて人も決して珍しくない時代ですが、いわゆるPOPs愛好家でもこんな方がでてきました。一昔前には考えられなかったことだと思います。
「もはや新しいジャズ盤はなくてもよい。過去の名盤だけで足りる。」と、ある評論家が書いて話題になったことがありましたが、ある意味私も共感しておりました。(~_~;)
生きている間に、過去の名盤・駄盤?をできるだけ聴きたいと願う私でも、いまだ1950年代~1960年代に残されたジャズのほんの数分の1も聴けていないのが実際のところです。笑
「時代が産んだ音」「斬れば血が噴出す」ごときリアルタイムの音楽、これが私が新譜よりは旧譜に惹かれる理由かも知れません。笑
投稿: おっちゃん | 2016年4月 9日 (土曜日) 05時58分