ながら聴きのジャズも良い・3
何時の頃からか、最近「ながら聴き」に適したジャズが多くなった様な気がする。時代と環境のニーズからくるものなのかもしれないのだが、しっかりとステレオの前に陣取って、スピーカーに対峙して、そのスピーカーから出てくる音に集中する、そんな「集中聴き」なジャズ盤が減ったような気がする。
まあしかし、である。何かをしながらの「ながら聴き」のジャズも「オツなもの」である。良い録音で流麗な演奏。そんな中、ちょっと印象的でキャッチャーなアドリブ・フレーズが耳を駆け抜ける。それでも「ながら」の邪魔をすることは無い、そんな「ながら聴き」に適したジャズもこれはこれで良いものである。
「GoGo Penguin」というトリオがある。英マンチェスター出身の「アコースティック・エレクトロニカ・トリオ」という触れ込み。2009年に結成され、地元マンチェスターを拠点に活動をスタート。イギリスの音楽賞「マーキュリー・プライズ」にノミネートされて注目を高め、ドン・ウォズに見初められ、今回、名門Blue Noteよりメジャー・デビュー。
そのメジャー・デビュー盤が『Man Made Object』(写真左)。今年2月のリリース。ちなみにパーソネルは、Chris Illingworth (p), Nick Blacka (b), Rob Turner (ds)。シンセ等は使わずに、アコースティックな音で構成されたトリオである。
といって、通常のピアノ・トリオでは無い。ジャズをベースに、クラシック、テクノ、ドラムンベース、ハウスなど多種多彩な音楽を融合した「アコースティック・エレクトロニカ・トリオ」である。とまあ、小難しいことは書いていても仕方が無い。これは聴いて感じていただくのが手っ取り早い。
ハウス、テクノ、ドラムンベースの要素が強い音作りではあるのだが、アコースティック・ピアノが中心のトリオ演奏であるということ、つまり、シンセの音が無いこと、そして、人力ドラムンベース感、これらが合わさって、独特の新しいピアノ・トリオの響きを獲得している。ハウス、テクノのフレーズ満載なんだがベースがジャズなので、最終的に「アコースティック・エレクトロニカ・トリオ」なる喩えになるのだろう。
これがまあ「ながら聴き」に最適なのだ。実は、このゴーゴー・ペンギンの音の雰囲気を聴いていたら、1980年代後半、一世を風靡した「ウィンダム・ヒル」レーベルの音を思い出した。そうウィンダム・ヒルのヒット盤、George Winston『Autumn』の雰囲気を想起した。この盤のピアノの音に「ハウス、テクノ、ドラムンベースの要素」を強く押し混ぜた様な音。恐らく、その印象が、この「ながら聴き」に最適な盤、という感覚になったのかと思う。
但し「ながら聴き」に最適と言うが、決してイージーな内容では無い。内容は高度で濃い。テクノやエレクトロニカ、ヒップホップの影響を感じるリズム&ビートに乗って、クラシカルな響きのする正統なピアノの旋律が展開される。これが実に新しく耳に響く。リズム&ビートが人力の響きであること、ピアノのタッチが硬質で流麗であるので、響きの基本は従来のピアノ・トリオに近いが、そこにハウス、テクノの要素が入って、新しい響きに転化しているのだ。
面白いピアノ・トリオが出てきたもんだ。これからが楽しみな「ゴーゴー・ペンギン」。コミカルなバンド名に惑わされてはなりません。「ゴーゴー・ペンギン」は、これから「要注目」なジャズ・バンドの一つです。
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いつもの独断偏見ですいませんが(~_~;)、私がジャズの「ガラガラポン→はい、こんなんでました~」的?に驚いた最後の経験は、大西順子のデビュー作の「WOW」でした。笑
「おお、この手があったか」といいますか、ごちゃ混ぜのスタイルながらとにかくデビュー作だけは単純にスイングしていて好きでした。
その後は本人が「ウイントンマルサリス的」?肩のちからの入れすぎで
だんだんと姿を消していきましたね。
私はしばらく前から、新聞などを読みながらジャズを流し、「お?」と思わず手が止まるジャズをメインに手元に残すことが多いですが、もはやジャズのスタイルの革新にはほとんど期待していませんです。(~_~;)
投稿: おっちゃん | 2016年4月18日 (月曜日) 10時48分