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2016年3月 8日 (火曜日)

「独特の個性」が欲しいなあ。

紛らわしい名前やなあ。70年代プログレのマニアからすると「こうなる」(笑)。レジェンドなプログレ・バンド、ピンク・フロイドのギタリストが「David Gilmour(デヴィッド・ギルモア)」。

ここでの「デヴィッド・ギルモア」は、ジャズ・ギタリストの「David Gilmore(デヴィッド・ギルモア)」。ピンク・フロイドとは無関係、カナ読みは同じでも、英語表記で「ギルモア」の綴りが違う。それでも実に紛らわしい名前である。

さて、ジャズ・ギタリストの「デヴィッド・ギルモア」。1964年2月の生まれなので、今年で52歳になる。ジャズ・ギタリストとして中堅のポジション。そんな彼がつい3ヶ月ほど前に、ニューアルバムをリリースしている。そのアルバムが、David Gilmore『Energies of Change』(写真左)。

ちなみにパーソネルは、David Gilmore (el-g, ac-g), Marcus Strickland (sax,b-cl), Luis Perdomo(p), Ben Williams (b), Antonio Sanchez (ds), Kofo Wanda (talking drum)。ドラムのアントニオ・サンチェスが目を惹く。アルバムのリリースは2015年11月だが、アルバムに収録された楽曲は、2010年12月と2012年11月の2つのセッションからの収録となっている。

全編に渡って、内容優秀でコンテンポラリーなメインストリーム・ジャズが展開されている。テクニック優秀、ソング・ライティングもなかなかのもの、アレンジも良好、音の彩りも良く、演奏の雰囲気も様々なジャンルの音を織り交ぜて多彩。しかし、どこかで聴いたことがある音世界なのだ。

つまりは個性に乏しいというのが第一感。音世界の雰囲気はパット・メセニーの「Day Trip」や「Unity Band」といったアルバムの音世界に実に似ている。最初聴いた時は、エレギの音が出てくるまではパット・メセニーの新アルバムかと思った。恐らく、ドラムのアントニオ・サンチェスが被っているからではないかと思われる。
 

Energies_of_change

 
マーカス・ストリックランドのサックスの音もどこかで聴いた様な音。ウェイン・ショーターの様でもあり、マイケル・ブレッカーの様でもあり、クリス・ポッターの様でもある。このサックスの音の特色からも、どうしてもアルバム全体の雰囲気が、パット・メセニーの「Day Trip」や「Unity Band」に相通ずるものがあると感じてしまう。

つまりは、バンド・サウンドに独特の個性が確立されていない、ということ。パット・メセニーなんて知らない、ウェイン・ショーターなんて知らない、という若い世代には斬新に感じる音世界かもしれないが、長くジャズを聴いてきた当方としては、どうにもこの『Energies of Change』の音世界は「どこかで聴いた音」になってしまうのが惜しい。

誤解しないでいただきたいのだが、アルバムの内容は実に優れたもので、現代のジャズ界の中でもハイレベルな内容だと思う。だからこそ、バンド・サウンドに独特の個性が確立されていない、というところが「もどかしい」のだ。ギターの音は柔らかでウォームながら切れ味の良い個性的な音なだけに、よけいにそう思う。

やはり、バンド・サウンドには独特の個性が欲しい。1曲聴いただけで「ああ、これはあのバンドの音だ」と判る様な個性が欲しい。ジャズのハイ・レベルな世界では、テクニック優秀、ソング・ライティングもなかなかのもの、アレンジも良好なバンド・サウンドは沢山ある。そんな中で、独特な個性は実に大切なものなのだ。

評論家筋やジャズ者ベテランの方々のブログを見れば、かなり評価は高い様だが、どうなんだろう。僕は次作に期待の「3.5星」。

 
 

★震災から4年11ヶ月。決して忘れない。まだ4年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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