キャノンボールのアルトの歌心
キャノンボールって、喧しいだけのアルト・サックスでは無い。陽気な明るい音の中にしっかりと歌心が潜んでいて、その歌心は意外とワンホーンな演奏の時に現れ出でるのだ。加えて、競う必要の無い、競う気にならないパートナーの場合も、しっかりとその歌心が現れ出でる。
これがキャノンボール・アダレイの聴き方のツボだと会得しているが、この聴き方のツボをしっかりと押さえているのが、このアルバムである。『Cannonball Adderley and the Poll-Winners』(写真左)。1961年5月の録音。ハードバップが成熟し、ファンキー・ジャズがブームの時代である。
ちなみにパーソネルが、Cannonball Adderley (as), Wes Montgomery (g), Victor Feldman (p, vib), Ray Brown (b), Louis Hayes (ds)。パーソネルを見た瞬間にあれっと思う。キャノンボールは東海岸中心のジャズメン、ウェス以下、他の4人は西海岸中心のジャズメン。キャノンボールが米国西海岸に巡業に来た時に、たまたま集まったメンバーがこのメンバーだったらしい。
偶然の産物っぽいパーソネルなんだが、アルバムのタイトル通り、当時、ジャズメンの人気投票で常に一位を争うプレーヤー達の競演となっている。キャノンボールからしてみると、自分以外西海岸のメンバーなので、競う必要の無い、競う気にならない。加えて、ホーンはキャノンボール一人、ワンホーンである。
ということは、このアルバムのキャノンボールは良い、ということになる。で、聴いてみると確かに良い。陽気な明るい音の中にしっかりと歌心のある、聴き応え満点のインプロビゼーションを体感することが出来る。西海岸中心のリズム・セクションがバックということもあって、バックの洒落たアンサンブルに合わせて、程良く抑制されたブロウも実に好ましい。
西海岸のメンバーも実に良い音を出している。ギターのウエスは弾きまくり。キャノンボールを惹き立てる為にバッキングに回ることが多い役回りに徹しているが、このバッキングについてもウエスは聴き応え満点。しっかり弾きしっかり唄う。意外とバックに回ったウエスも隅に置けないことが良く判る。
ピアノ兼ヴァイブのフェルドマンも趣味が良く、小粋なフレーズには思わず口元が緩む。そして、何と言っても、バッキングに回って、このアルバムの演奏全体の底を支え、ジャジーなリズム&ビートを供給する、ベースのブラウンとドラムのヘインズが素晴らしい。重心の低い、タイトで躍動的なベース&ドラムが、このアルバムに詰まった演奏を上手く支え、上手く鼓舞している。
良いアルバムです。そう言えば、映画「スイング・ガールズ」で、竹中直人扮する小澤先生が、このアルバムについて熱く語るシーンがありましたね。このアルバムって、結構、マニアックな存在で、この映画の関係者ってちゃんとジャズを判ってるなあ、と妙に感心したことを思い出しました。
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